こんにちは!金成コーデックスです!
実生栽培をしようと種子を入手するも
「播種の適期からずれているのでもう少し保管しておきたい」
「たくさん種が自家採取できたけど蒔くスペースがない」
などの理由からすぐに蒔けずに保管を余儀なくされる場合がありますよね!
そんな時に「どんな保存方法がいいのだろう?」と種子の保管について疑問に思う方も少なくないと思います。
そこで本記事では、私が実際にしている保管方法と、一般的に言われている「種子の鮮度と保管方法と発芽率への影響」について簡単にまとめてみようと思います。
※本記事の内容は文献等も引用していますが、大部分は個人の経験、感想に基づくものなのであくまでも参考程度にご覧ください!
※実生初心者向けの情報です
Contents
種子の鮮度と発芽率の関係について
種子は鮮度がすべて・・・ではない?
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どんな植物においてもあまりに古くなった種子は発芽率が落ちたり、カビが生えやすくなったり、発芽したとしても生育に問題があったりします。
そのため「種子は鮮度がすべて」というセリフを聞いたりしますが、これは”必ずしもそうではないな”と特に冬型コーデックス種子や難発芽性の種子、塊根メセンの種子をまくようになって思いました。
そもそもが保管に向かない種子(個人的に経験したものでは、アボカド、パキラ、カレーリーフなど)は、どんな保存方法であれ採取から一定期間を過ぎると発芽率が急激に落ちます。
逆に保管方法がしっかりしていれば、種子の発芽率はさほど落とさずに播種適期に蒔くことができます。
種子にとって好ましくない環境(高温多湿)に放置すれば数か月で発芽しにくくなるため、管理状態に関する情報を無視して「鮮度が悪い(採取してから時間が経過している)=発芽率が低い」というように考えてしまうのはちょっと違うと思っています。
種子の鮮度が良い≠発芽率が良い種子
私がコーデックスの実生栽培を始めた当初は「新鮮な種子はカビにくい」とか「新鮮なほど発芽率がいい」と思っていました。
「良い種子」とは「発芽率がいい種子」である。
そう考える人が多いと思いますが、実生栽培を長年やると、自生地の環境が違えば同じ系統の品種でも発芽方法が全く違っていたり、特殊な処理をしないと発芽しない種子が沢山あることを学びました。(※例↓↓Tylecodon pygmaeusの発芽方法が他のチレコドンと異なる点について)
「発芽しなかった=種子鮮度のせい」としてしまうのはあまりに浅慮で、自分の知識不足を棚に上げていただけなんだなぁと今になっては思います。
そんな当時の実生初心者だった自分に教えてあげたい種子の保管方法についてもう少し具体的にまとめます。
種子の寿命|保管・保存方法と休眠について
種子の寿命は品種間で差がある
これは当然かもしれませんが品種によって寿命の長い種子と短い種子があります。
以下は野菜に関してですが、農研機構の調査で種子の寿命(一定以上の発芽率を維持できる期間)が推定されています。
今回、農研機構は、−1°C、湿度30%という保存に適した環境条件で保存していた種子について、30年間にわたり5年おきに発芽率を直接調べ、その結果から主要な50種8万点の種子寿命を推定しました。その結果、一定以上の発芽率(保存開始時の発芽率の85%以上。おおむね60~85%)を維持できるおおよその期間はダイズで15年、コムギは20年、トマトは30年、ソバは70年、キュウリは130年などと推定されました。
私が育てているような塊根・多肉植物などに関して言うと、ブルビネあたりは種子の保管期間が短いという意見をいただいたことがありますし、逆にメセンの種子は10年程度は保存できるというお話も聞きました。
アルブカに関しては1年程度の冷蔵庫保管でも発芽しました。
クワ科のドルステニアでは、Dorstenia lancifoliaは採取後すぐ蒔くよりも半年以上保存してから蒔いたほうが発芽率が上がると聞いて実践したところ、確かにすぐ播種したものよりも発芽率がよかった経験があります。(※Dorstenia foetidaはこぼれ種であちこちで発芽してたので保管期間云々はなくてもよく発芽してるように思います)
保管期間が長いほうが発芽率が良い場合もある
これは前述のDorstenia lancifoliaの例でも触れましたが、保管期間が長いほうが発芽率が良い場合もあります。これは「鮮度がいい=発芽率がいい」という考えの逆ですよね。
こちらの「Dormancy and viability of Ferocactus peninsulae seeds」という論文にて、種子の保管期間が長いほうが発芽率が良かったという例が紹介されています。
フェロカクタスの半島玉の種子の保管期間と発芽率の関係で、保管期間が3か月よりも10か月、48か月と保管期間が長いほうが発芽率が良く、発芽までのスピードも保存期間が長いほうが早くなったとありました。
他にも、メセンなどの種子はとり蒔きでも発芽する場合もあれば、1~2年冷蔵保存したほうが発芽率がいい場合もあったりするようです。
よく種子の発芽についてアドバイスをいただく方は「メセン類は入手後1年くらいは冷蔵庫で保管してから蒔く」とおっしゃっていました。
保存期間と発芽の関係は「種子の休眠」に関連していて、何らかのきっかけで種子が休眠状態になってしまうと蒔いても全く発芽しないということが起きます。メセンの種子は休眠状態になりやすい(?)のか、冷蔵庫で長期保管してから蒔くという方が多いですね。
種子の休眠を打破する方法
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種子が休眠状態になるのは、”地上の過酷な環境を乗り切るために活動を抑えている状態”なのでこの状況を打破しなくてはいけません。
種子の休眠を打破するにはいくつかの方法がありますが、その中でも最も簡単なのが「低温(5度程度)での保管」です。
低温で保管することによって休眠状態になった種子(発芽率の低い状態)が打破されて、発芽しやすくなります。
そしてその5度程度の環境というのが「冷蔵庫」がピッタリ。
冷蔵庫で適切に保管することで発芽率を上げる効果もありますし、種子の劣化を防ぐことができます。
休眠状態にあって発芽しにくい種子は、低温環境で保存することで発芽率を上げることもできる。つまり「鮮度がすべて」の考え方から少し脱却できるのではないかなと思います。
他にも、オーストラリアに自生する一部の植物は「山火事の時の煙」によって休眠状態の打破が起きることも知られていて、燻煙処理をしないと発芽しないという植物もあります。
燻煙処理に関しては私もよく実生をしているペラルゴニウムにも有効で発芽率がかなり上がります。
種子の保管方法について
・5度以下、湿度20%前後の冷蔵庫で保管する
・冷蔵庫に入れる際はジップロック、タッパー、封筒などに種子を入れる
・長期保存する場合は乾燥材も一緒に入れる
私が種子を保管するうえで大切だなと思っているのは上記のポイントです。
低温であることと、湿度が高すぎないことが大事。
種子は高温多湿に弱いので、湿度に関しても気を付けたほうが良いので容器や封筒に入れて乾燥材も入れるとベターだと思います。
使っている冷蔵庫が直冷式の方は種子の凍結に注意!
種子を冷蔵庫管理するときにたまに聞くのが「種子を凍らせてダメにしてしまいました」という話。
冷蔵庫には冷却器が内部にある「直冷式」と、外からファンで冷やす「ファン式」があり、直冷式は小型冷蔵庫に多く、霜取りが発生するので種子が凍ることほど冷えすぎてしまうことがあります。
長期保管するなら特に冷蔵庫の設定温度などにも注意しましょう!
まとめ
種子の発芽には、種子の休眠や保管方法、保存期間がとても深くかかわっていることがおわかりいただけたでしょうか。
自分が実生初心者の時は、パキポディウムやアガベの実生ばかりやっていて「鮮度がすべて」と思っていた時期がありました。(よく鮮度が悪くて発芽しなかったーとかSNSで目にしてたので)
しかし、冬型塊根やメセンの実生を始めるようになって「種子の休眠」やそれを打破しないと発芽しにくいということを少しずつ理解するようになったんですね。
そして気が付けば種子の鮮度ってほとんど気にしなくなっていました。
いまだに購入した種子が発芽ゼロで終わることもありますが、少なくとも種子の鮮度のせいにすることは全くなくなりました。それよりもその失敗からその植物の自生地の環境について調べたり詳しい方に相談したりすることで、理解が深まってより実生の楽しさにズブズブとはまるようになったわけですね。
適切に保管すれば発芽率を上げることもできますし、長期間の保管も可能です。
種子がフレッシュであることは大事ですが、発芽に関する絶対的な条件ではないことを知ってもらえると、もっと実生が楽しくなるかなーと思います。