こんにちは、金成コーデックスです。
私はパキポディウム大好きでこれまで約20種類弱の実生栽培を行ってきました。
パキポの実生栽培の方法や手順に関しては基本的には同じ方法で行っているんですが、パキポディウムの基本種の違いによって、見た目はもちろん生育のスピードなんかもかなり違ってきます。
初心者でも発芽させやすかったり太らせやすかったり、成長が遅かったり早かったり様々なんですよね。
でもある程度パキポの色んな品種を実生栽培していると、「こいつとこいつは同じレウコポディウム節だから~」なんて感覚でわかってくるのでグルーピングしやすく、それぞれの特性が理解できてきます。
しかし、日本語で検索してもパキポの分類について詳しく書いてあるサイトはほとんどありません。
そこで本記事では、少し学術的な話になりますが、海外の文献に掲載されていたパキポディウムの生物分類階級について、私の分かる範囲でまとめたいと思います。
※分類階級に関しては時間の経過とともに情報が変更になる場合があり、また私が調べられる範囲での情報を記載しております。内容に誤りが無いように努めておりますが、間違いがある場合も大いにございます。もし情報に間違いがございましたらやさしくご指摘いただけますと幸いです。
Contents
パキポディウムは大きく分類すると「マダガスカル産」と「アフリカ大陸産」の2つがある
パキポディウムを形態学的に分類をするうえで、まず一番最初に分けられるのが「マダガスカル産(Nesopodium/ネソポディウム亜属)」と「アフリカ大陸産(Pachypodium/パキポディウム亜属)」の2つです。
- brevicaule subsp. brevicaule
- brevicaule subsp. leucoxanthum
- rosulatum subsp. bicolor
- rosulatum subsp. cactipes
- rosulatum subsp. gracilius
- rosulatum subsp. makayense
- rosulatum subsp. rosulatum
- densiflorum
- eburneum
- horombense
- inopinatum
- decaryi
- rutenbergianum var. rutenbergianum
- rutenbergianum var. sofiense
- rutenbergianum var. merdionale
- geayi
- geayi var. mikea
- lamerei
- lamerei var. ramosum
- lamerei var. fiherenense
- ambongense
- menabeum
- baronii
- baronii var. windsorii
- bispinosum
- lealii
- namaquanum
- saundersii
- succulentum
※参考:Phylogeny of the plant genus Pachypodium (Apocynaceae)
上記の分類は2013年に発表されたパキポディウムの分子系統解析による分類で、論文自体は新しいものではないですが、自生している場所のジオグラフィックな情報と花や葉の色や形などから判断する形態学的特徴による分類が一般的なパキポディウムにおいて、遺伝子情報で分類しているのは興味深かったです。
生物分類階級で上記の2つは「Subgenus(亜属)」で分かれていて、わかりやすく言うと自生地が「マダガスカル」と「アフリカ大陸」で分かれています。
※我が家にあるアフリカ産のパキポディウムはこのサウンデルシ―(白馬城)のみ
約25種類あると言われているパキポディウムのうち、5品種はアフリカ大陸に自生している品種。
この両者の大きな違いの1つとして「自生地の環境」があります。
例えば、アフリカ大陸産のビスピノーサムは、南アフリカのポートエリザベス近郊が原産と冬にかなり寒くなる地域に自生していて、寒さに弱いパキポディウムの中でも最も耐寒性が強いと言われています。
自生地の環境に合わせて育て方を工夫したりしますが、特にアフリカ大陸産の5品種はマダガスカル産とは違うので工夫するポイントが違ってきますね。
マダガスカルのパキポディウムは「3つの節」と「5つの列・系」に分類される
Section(節) | Species or subspecies |
---|---|
Gymnopus |
|
Leucopodium |
|
Porphyropodium |
|
また、一般で流通量の多いマダガスカルのパキポディウムですが、「Section(節)」で分類すると、「Gymnopus(ギムノプス節)」「Leucopodium(レウコポディウム節)」「Porphyropodium(ポルフィロポディウム節)」と大きく3つに分けられます。
マダガスカルのパキポディウムの種の同定は最終的には花の色や形で行うとされているので、これらの品種間では花が咲くまでは同定が難しいほどよく似ているものが多いです。
これら3つのSection(節)の中でも、ギムノプス節とレウコポディウム節のパキポはさらにSeries(列・系)で5つに細かく分類されますのでもう少しグルーピングしていきます。
※各Section内のSeries(列・系)の分類は、上記の表の中で色分けしています。
Gymnopusu(ギムノプス節)のパキポディウム
Series(列・系) | Species or subspecies |
---|---|
Ramosa |
|
Densiflora |
|
ギムノプス節のパキポディウムは「Ramosa(ラモサ列・系)」と「Densiflora(デンシフローラ列・系)」に分けられます。
※Ramosaに分類されるパキポ。左がレウコキサンツム、右の3つはグラキリス、ロスラーツム、カクチペス
デンシフローラの方が新しく追加されたSeriesで、その中の「inopinatum(イノピナツム)」と「eburneum(エブルネウム)」は元々rosulatum系とされてましたが、のちの調査でデンシフローラ系に追加されました。
※Densifloraのパキポ。左からデンシフローラム、エブルネウム、ホロンベンセ
エブルネウムとかは、実生し始めの頃はブレビカウレやレウコキサンツムに似ているので同じ系列なのかと思っていましたが、細かく分類すると別というのは驚き。
あと、感覚的にはブレビカウレ系とロスラーツム系が同じSeriesなのが個人的にちょっと不思議です。
Ramosaに分類されるパキポの中でも、ロスラーツム系(グラキリス・カクチペス・ロスラーツム)は、葉が細く尖っているので見分けやすいです。
※ロスラーツム系。奥がグラキリス、左がロスラーツム、右がカクチペス
あとで少し出てくるんですが、グラキリスやカクチペスなんかは棘の生え方が2本ずつです。
このギムノプス節のパキポディウムには新種としていくつか報告されているのがありますが、現時点(2019年)ではまだ追加されていないものもあり今後この分類にも変化があると思います。マカイエンセが追加されたのが最近では新しい情報となってます。
Leucopodium(レウコポディウム節)のパキポディウム
Series(列・系) | Species or subspecies |
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Contorta |
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Ternata |
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Pseudoternata |
|
レウコポディウム節のパキポディウムは「Contorta(コントラータ列・系)」「Ternata(テルナータ列・系)」「Pseudoternata(スードテルナータ列・系)」の3つに分けられます。
この3つで最も新しいのが「Pseudoternata列・系」で、ラメリーのシノニムとされていたメナベウムやアンボンゲンセが加えられています。
Pseudoは英語では「偽(にせ)の」とか「偽りの」という意味があるので、限りなくTernata列・系に近い分類であるのがわかります。
では、Ternata(テルナータ)とは何のこと?となると思うんですが、これは「三数の」という意味があって、ここに含まれるパキポディウムは棘が3本セットで出てくる「三刺系」とされる品種なんですね。
我が家にもゲアイー、ラメリー、フィヘレネンセ、ラモスムがありますが、どれも棘が3本1セットで出ています。
※テルナータのパキポ。左からゲアイー、ラメリー、ラモスム、フィヘレネンセ
この4品種を近くで見てみると、本当に棘が3本1セットで出ています。
ただ、同じ3本棘のアンボンゲンセやメナベウムはTernataではなく、Pseudoternata(偽の3本棘グループ)という事なんですね~。
次に、デカリーやルーテンベルギアヌムが含まれるContorta(コントラータ)ですが、「ねじれた」とか「回旋の」という意味があります。
棘の無いデカリーや、草丈がとても高くなるルーテンベルギアヌム系は、いずれも成長する中で株がくねくねと捻じれることがあるのでこういう種小名がついているんでしょう。
Porphyropodium(ポルフィロポディウム節)のパキポディウム
Series(列・系) | Species or subspecies |
---|---|
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最後に、CITESⅠのバロニーとウインゾリーが含まれる「Porphyropodium(ポルフィロポディウム節)」ですが、「Porphyro-」はラテン語で「紫」とか「暗い赤」を意味するので、赤花のバロニー&ウィンゾリーが分類されるSection名になっているのは納得。
※左がウィンゾリー、右がバロニー
でも、なんで「紫」なんでしょうね? バロニー&ウィンゾリーは「赤花」という印象なので、かろうじて「暗い赤」という意味もあるようなのですが、私が調べたところ大半は「Porphyro = Purple」としていました。
※ウィンゾリーの樹皮
バロニーやウィンゾリーの特徴としては、棘が2つ1セットで付いている(ことが多く)、樹皮にシワが寄るようにしてひび割れていきます。
まとめ
ここでご紹介したのは遺伝子情報による分子系統解析による分類であって、写真を見せてどれがホロンベンセでどれがグラキリスというものではありませんでしたが、分類階級の分かれ方をみるとそれぞれの品種間での共通点や違いがよくわかると思います。
当然この情報を知っていることで、パキポディウムの品種の鑑別にも役立つと思いますが、記事本文中でも述べた通りマダガスカル産のパキポディウムの最終的な同定は「花」によるところが大きいです。
葉の形やトゲの本数で明らかに違うだろうというようなもの以外は、同じ分類の品種であればしっかり育って花が咲くまで見分けるのが難しいでしょう。
私自身がこれまでに実生栽培したパキポディウムは全品種の2/3程度なので、これからも新品種の実生に挑戦しつつ、いつか全品種コンプリートして観察したいなと思っています。
参考文献
- 2013. Apr “Phylogeny of the plant genus Pachypodium (Apocynaceae)”
- 2004.Another look at the pachypodiums of Madagascar
- パキポディウム属の分類・種類