こんにちは、金成コーデックスです。
夏が終わりに近づいてくると冬型コーデックスの種子をまきたくなりますよね?(えっ、ならない??!!)
当サイトではパキポディウムやアガベの実生栽培記事を結構書いてきました。ただ、いずれもカビが生えないようにする処理だったり基本的な発芽温度だったりを間違えなければ、あとは種子さえ新鮮なら比較的容易に発芽します。
初心者でも実生栽培に取り組みやすいのは「夏型」だと思いますが、ある程度植物沼にハマってくると「冬型もいいじゃん」ってなってきます。私はそうでした。
ただ、冬型の種子は別記事でも書きましたが発芽処理に一癖も二癖もあるものばかりで、普通にまいただけでは発芽率がかなり低く、
「夏型はそんなに苦労しなかったのに、、何故オマエハハツガシナイ!?」
と苦戦した人も多いのではないでしょうか。
私自身まさにそのケースで、冬型の実生は失敗の方が多く、数まいたり色々な実験してきて、諸先輩方の助言もいただき、ようやく発芽のコツをつかんできました。
本記事では、中でもかなりはっきりとした発芽率の改善がみられた「低温湿潤管理」による冬型種子の休眠打破&発芽促進についてまとめたいと思います。
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Contents
低温湿潤処理(Cold Stratify)とは
低温湿潤処理は、冷蔵庫などの冷暗環境に湿らせた種子を数日~数週間保管することで、種子の休眠状態を打破して発芽率を上げる方法です。
私がこれまで発芽に苦戦した、Othonna(オトンナ)、Pelargonium(ペラルゴニウム)などにおいて、この低温湿潤処理をすることによって明らかな発芽率の向上が見られました。
ちなみに、一回低温処理を2週間ほど行えば、その後は20℃くらいになっても大丈夫だと思います。
Othonnaの自生地では、成長期に当たる冬は雨が降るだけでなく、夜は霧でビショビショに濡れるみたいです。冷たくて湿った気候がOthonnaの発芽や成長にはよいのではないかと思っています。
— たわし集め Tawashi-Atsume (@tawashiatsume) August 29, 2021
特にOthonnaに関しては、自生地が日中だけでなく夜も霧でビショビショに冷えている冷湿環境にあるそうで、低温湿潤処理が効果的とたわし集めさんに教えていただきました。
実際の実験結果については後述しますが、まずは具体的な方法についてまとめます。
低温湿潤処理の具体的な方法について
※ここで記載する方法は私が実際に行った方法で誰でも真似することができますが、ベストな方法であるとは限りません。種子の状態や環境によって効果が変わる場合もあり、必ずしも発芽を保証するものではありませんので、予めご了承ください。
0.今回実験に使った種子リスト
- Othonna lobata (2021/6 輸入種子)
- Othonna cacalioides (趣味家さん採取種子をいただいたもの)
- Pelargonium appendiculatum (2021/5 自家採取種子)
- Pelargonium lobatum (2021/6 輸入種子)
種子鮮度という面では、Othonna cacalioidesとPelargonium appendiculatumが採取日からの期間が短く、輸入種子の2つは採取日からある程度時間がたっています。
1.種子をメネデール&殺菌剤の希釈液に浸水する
まず、私は低温とはいえ長期間吸水状態を放置するので種子の殺菌は予め行いました。
殺菌剤の希釈液と「メネデール」の希釈液を混ぜたものに3~4時間浸して吸水させ、種子の外殻などに付いてることの多いカビの原因になる菌を殺します。
Pelargonium2種に関しては、吸水させた時点で外殻が柔らかくなっているのですが今回はあえて外殻を剥かずにおきました。
Othonnaに関しては、cacalioidesは種子自体が小さく剥く外殻もないので吸水させただけ、lobataはものすごく毛が多いのですが敢えて外殻を外さずにおきました。
これらには自分なりの理由があって、「いずれも自生地の冷湿環境に近づけることを考えれば種子の状態も自然のままにしてみた方が良さそう」という事と、「オトンナ(ロバタ)に関しては吸水することでゲル状物質が出現するので吸水後の外殻を剥く作業が億劫である」という理由からです。
ペラルゴニウムの外殻は、発芽能力のある種子であれば吸水した時点で自然と捲れてくるので剥がす必要はなさそうだなーと最近では感じています。
2.種子の外殻を外さずにキッチンペーパーで包む
種子の湿潤状態を保つために、吸水させた種子をキッチンペーパーにはさみます。
多分ティッシュペーパーとか、コーヒーのフィルターとかでも良いと思いますが、私は種子の状態を外からでも観察できるように不織布みたいなキッチンペーパーで挟みました。
個人的には、オトンナはゲル状物質が出るので種を採り出す時にティッシュペーパーでは種子とくっついちゃって扱いにくそうだなと思いました。厚手のキッチンペーパーだとその心配はなさそうですよね。
3.チャック袋に入れて、さらに霧吹きで湿らせる
種子を挟んだキッチンペーパーは、下の商品のような小分けのチャック袋にいれてから、霧吹きでキッチンペーパー自体がしっかり水を含むように湿らせました。
ただ、種子自体も呼吸をできるように水浸しにするのではなく、あくまでも「湿らせる」程度に留めて、チャックをしめました。
4.タッパーに入れて冷蔵庫(約5℃)で保管
小分け袋に種子を入れたら、タッパーに入れて冷蔵庫の一番上の段にいれました。
野菜室とかでも良いのかなとは思ったのですが、凍らない程度にしっかり冷やすことにしました。ただ種子が冷凍されてしまう事はNGなので、冷蔵庫の設定温度などを普段から低めに設定している人は注意してください。
当初の低温湿潤処理の予定は10日~2週間でしたが、1日おき位に種子の様子を見るためにタッパーを開けてチェックしていました。
もし発芽していたらあとは土の上においてもOKとのことだったので、必要以上に長期間置かない方が良いと思います。
低温湿潤処理の方法まとめ
- 種子をメネデール&オーソサイドの希釈液に3~4時間浸水
- ぺラルゴニウム・オトンナ共に特に外殻は外さずキッチンペーパーで包む
- 100均のチャック袋に入れて、霧吹きして全体的に湿らせる
- タッパーに入れて冷蔵庫(約5℃)で2週間保管
低温湿潤処理の結果(冷蔵庫に入れてから8日目)
1.Othonna Lobata
8/30冷蔵庫in → 9/7開封
全ての種子がゲル状物質で覆われていて、べっとべと。
冷蔵庫の中での発根・発芽は確認できず。一つだけ試しにヌルヌルをとってピンセットで外殻を剝いてみたらしっかり発芽しそうな感じになってたので、他の種子はいじらず用土の上に覆土せずに播種。
その後、常温で発芽を確認。
【2022/11追記】
オトンナの場合は発芽する場合は冷蔵庫内で根がしっかり出てくるので、変化がないからと言って外殻を剥いたりはしないほうが良いです。種子に変化がない場合は、そのまま冷蔵庫内でもうしばらく置いておくか、ある程度温度変化のある屋外で管理するなど環境を変えるのもいいかもしれません。
2.Othonna cacalioides
8/30冷蔵庫in → 9/7開封
5つ全てゲル状物質で覆われていて、うち一つが冷蔵庫内で発根。
Twitterで助言下さったたわし集めさんによると、冷蔵庫内で低温湿潤管理をしてゲル状物質が出てればほぼほぼ発芽するとのことだったので、取り出して全て覆土せずに播種。
春に蒔いた時は1/10の発芽率で、発芽した1つもなんで発芽させられたかわからない状態だったので、確実に発芽のスイッチを押せた感じがして手ごたえがありました。
3.Pelargonium appendiculatum
8/30冷蔵庫in → 9/7開封
袋を開封しなくてもわかるこの発芽具合
10粒中7粒冷蔵庫内で発根、しっかり吸水して発芽しそうだけど未発根なのが1つ、残り2つは発芽能力のない秕(しいな)だった。
これまではスモークペーパーや播種後にクーラーボックスで管理する方法を試してみて1/20位の発芽率だったことを考えると、明らかに発芽スイッチが入ってるように思える。
ペラルゴニウムにスモークペーパーが効果的な事を考えると、スモークペーパーの成分で燻煙処理をした後にこの低温湿潤管理をすればさらに発芽率はあげられそうな気がするけど、現段階で発芽能力がありそうな種子はあらかた冷蔵庫内で発根しているのを見るとこれだけでも十分な休眠打破効果がありそう。
全て用土に根の部分が下になるようにして播種。
4.Pelargonium Lobatum
8/30冷蔵庫in → 9/7開封
10粒中5粒冷蔵庫内で発根、しっかり吸水して発芽しそうだけど未発根なのが2つ、残り3つは発芽能力のない秕(しいな)だった。
※発芽している種子の上下は反応なし。特に上の方のしぼんだままの種子はシイナで発芽能力が元々なかったと考えられる。下の方も多分望みは薄い。
ペラルゴニウム・ロバツムはクーラーボックスに入れる即席の冷室管理でもあらかた発芽したけど、アッペンディクラツム同様に低温湿潤管理の方がよさそうです。
発芽能力がありそうなものだけ根の部分が下になるようにして播種。
まとめ
ここまで冬型の種子の発芽管理や休眠打破の方法を色々試してきた感じたところだと
- 低温湿潤処理は冬型コーデックス(オトンナやぺラルゴニウム)の発芽促進に効果あり
- 当初、低温湿潤処理は2週間を予定していたが、7~8日目で冷蔵庫内発芽を確認
- ペラルゴニウム&サルコカウロンはスモークペーパーによる燻煙処理の後に低温湿潤管理を行うのが一番効果が高そう。低温湿潤管理だけでも十分発芽するものがある。ただし、スモークペーパーに関しては処理後の管理温度が高いとあまり発芽は期待できない(やっぱり低温は必要)。外殻(特に内側の薄皮)を剥く方法はリスキー!それをしなくても発芽はする。
- オトンナロバタは播種後の簡易冷室(クーラーボックス&保冷剤で15℃程度に冷やす)でも半数位は発芽した(温度が安定した冷蔵庫内より、温度変化がある程度あったほうが発芽しやすい可能性)。
- オトンナカカリオイデス、オトンナクラビフォリアなどは低温湿潤処理で発芽率が明らかに向上した。
というまとめになりました。
冬型の種子は発芽させるのが難しい印象でしたが、発芽スイッチをしっかり押させる方法をやれば秕(しいな)以外はちゃんと反応するので、単純に適切な発芽管理を行えてなかっただけなんだと思います。
発芽させる方法を確立させて正しい手順を踏みさえすれば発芽のスイッチを押しやすいので、そこまで恐れることは無いのかもしれません。
当記事で紹介した4種類の冬型の成長に関しては、状況が変わり次第更新する形でUPしていきたいと思います。
最後に、当記事の内容は執筆時点での私の考えだったり良かったと思える方法を書いているだけなので、時間の経過とともにもっといい方法が見つかることもあります。その場合は出来る限り情報を更新いたしますが、あくまで現時点でのものとして参考程度に留めていただけますと幸いです。