こんにちは、金成コーデックスです。
冬型コーデックスの中で人気がある「オトンナ属」は、品種によっては実生半年程度の苗でも1万円越えするくらい高価なものもあるので、少しでもコストを抑えて種子から育てることを考える人も多いと思います。
しかし、種子自体もめちゃくちゃ高価なので極力失敗したくないですよね。
私も2021年からオトンナ属の実生をスタートさせ、無事(?)冬型塊根の沼にずっぽりとはまり込んでいるので、その実生栽培の経過、失敗した経験、おしえてもらった実生栽培のコツなんかをまとめていきたいと思います。
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オトンナの種子の発芽環境と発芽のしやすさ
オトンナの種子の特徴として綿毛がちょろっとついている物から、種子全体を毛皮のような白い毛でびっしりと覆われているものなど様々あります。
発芽のしやすさもやはり品種によって大きく違うようで、一番流通量が多いであろうO.クラビフォリアは発芽させるのが優しい部類に入るようですが、O.レピドカウリスはやや難しいと聞きますし、O.レトロフラクタなどの灌木系オトンナの種子は毛深いのでこれもちょっと特殊かもしれません。
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こちらのインスタの投稿では、フォロワーさんがコメントでO.レピドカウリスの実生が難しかった理由が「温度調節のシビアさ」だと教えてくれました。
レピドカウリスは「15度~18度くらいの低めの温度で発芽したが、20度を超えるとダメだった」と仰っていて、私は基本20℃は超える温室内でいつも発芽管理をしているので、きっと私がレピドカウリスの種子を購入してたら発芽せずに終わっていたんでしょうね。
こういう情報を教えていただけるのは本当にうれしい限りです。
レピドカウリスのみならず、カカリオイデスなども20度未満の温度で管理した方が発芽率が良さそうなので、オトンナはあまり高温で管理するのではなく少し涼しめの環境で発芽を待った方が良いかもしれません。
オトンナの種子は浸水させるとカエルの卵のようなゲル状の膜で覆われる
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上の写真はオトンナ・クラビフォリアの種子ですが、よく見るとゲル状の膜に覆われてカエルの卵のようになっています。
この現象はハーブのホーリーバジルなどでも見られ、主に種子が発芽するまでの保水力を保つ目的があるようです。
主にナミビアや南アフリカに自生するオトンナは、岩場や砂岩の土壌だったり地域的にもほとんど雨が降らない場所だったりするためか、種子自体にこのような機能が備わっているものと想像します。
ただこれ、日本で腰水管理で実生をする場合にも必要な機能なのかというのは疑問も残りますよね。私にオトンナの種子を譲ってくださった方から聞いた話だと、腰水管理するので保水機能は必要ないと浸水させた種子を軽く指でこすり洗いしてこのゲル状物質を取り除いて播種する方法もあるようです。理にはかなってると思います。
播種前にメネデール希釈水に3~8時間ほど浸水しておくと発芽率が良い
私自身比較検討実験をしたわけではないですが、オトンナの実生を沢山やられている方が「クラビフォリアは播種前に8時間程度のメネデール希釈液への浸水で発芽成績が良かった」と教えていただきました。
私はオトンナに限らず基本的に播種前にメネデールを使うので、言われたとおりにやってみて結構発芽したので印象としては悪くないです。ただ希釈液なので間違えて原液で浸水しないようにしてくださいね。100倍以上には薄めて使いましょう。
全てのオトンナの種子で前述のゲル状物質が出るかどうかを確認したわけではないので何とも言えませんが、水を吸うと保水機能を持つカエルの卵状態になるので、そんなにメネデール希釈液への浸水時間は長くなくていいかもと思います。長くても半日、、って感じでしょうか。
オトンナの発芽スイッチは、想定しているよりもかなり”低温”かも?
オトンナに関しては、クラビフォリアは比較的発芽させやすい印象ですが、アルブスクラ、ロバタ、レトロフラクタなどの灌木系の毛深い種子はことごとく失敗してきました。
秋まきにした時に、夏が戻ってきたような気温になり急遽冷やすためにクーラーボックスに保冷剤を入れて一晩様子を見たところ、オトンナロバタが急に発芽を始めました。
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オトンナは最高気温が20度を下回るくらいが播種のタイミングとして適してると聞きましたが、実際に播種してみるとその辺の「低温」が本当に発芽スイッチを押すのに必要なんだという事を学びました。

【2021/9/7 追記】オトンナの発芽管理は低温湿潤処理がおすすめ
オトンナカカリオイデスを春先に播種した時は、最高気温20℃位の時に播種したのですが月が率はかろうじて1/10と一つだけ発芽しただけでした。
その後、低温湿潤処理がオトンナの発芽には効果的で、それをすることでかなりの発芽率の改善につながると教えていただき実際に試してみました。
結果は以下別記事でまとめていますが、オトンナのみならずぺラルゴニウムなどのその他発芽が難しい冬型の種子の発芽促進に効果があるのが分かりました。

オトンナの種子の購入について
オトンナの種子は、親株自体が高価で実生すれば比較的短期間(半年くらい)で花を咲かせる品種も多いため、栽培家さんは販売せずに自ら採り蒔きすることが多いなどの理由であまり流通しません。
ヤフオク、メルカリなどで販売されているのを購入するのが最も確実ですが、いずれも4~5粒での販売で価格も高額です。すべて発芽するなら良いですが、実体験上アガベやパキポに比べて発芽までにかかる時間も長く、全く発芽しないことも少なくないので結構ギャンブルだと思います。
種子を発芽させる自信がない方にとって一番いいのが、発芽して2~3か月程度の小さい苗を安価に購入することですが、種子や大きめの株に比べてそのくらいのサイズの物は流通量も少ないです。
願わくば私が増やして、自身のオンラインショップで販売できればいいなと思いながら栽培しているのですが、やはり最初の数年は自ら採り蒔きして選抜作業をしていくと思います。
ebayなど海外のオークションサイトで一般の園芸家さんが出品していることもありますが、検疫証明書を出さないと日本への種子の輸入ができないので、密輸する危ない橋を渡る危険性が高まりあまりお勧めできません。
オフシーズンの夏場に購入すると少しは値段が下がるようなので、6~8月くらいに良い出会いがないか探してみると良いかもしれません。
【失敗談】表土をバーミキュライトにしたのは失敗
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はじめてのオトンナの実生はクラビフォリアで、種子をご厚意でお譲りいただいてチャレンジさせていただきました。
実生栽培の方法(環境等)についてもアドバイスいただいたのですが、用土に関して私が普段アガベやパキポディウムの発芽管理で使う「表土をバーミキュライトにした発芽用用土」に下のは失敗でした。
発芽はすんなりいったのですが、粒子が細かく、オトンナのゲル状の物質にまとわりついて発芽後の成長を阻害している印象を持ちました。上手く発根し始めても、乾燥したバーミキュライトは意外と固まるのか植物の芽自身のチカラで殻を破れないものが続出し、そのまま溶けてしまったのがいくつかありました。
また、アガベやパキポは発芽までに遅くとも4~5日あれば事足りますが、オトンナは発芽までに1か月くらいを要することもざらにあるので、極端に保水性がたかいバーミキュライト100%よりも、もう少し粒子は固くて通気性もいくらか確保できた用土の方が良かったと思います。
以降、細粒の鹿沼土と赤玉土に籾殻くん炭と若干の多肉用培養土を混ぜたものを使っていますが、今のところバーミキュライトで失敗したような「種子が溶ける」「発芽が上手くいかない」という状態は見かけていません。
オトンナの実生栽培方法まとめ
現在までに10種類弱のオトンナの実生栽培を行って、特に発芽管理などについて感じたこと、経験したことをまとめます。
・オトンナは品種によって発芽の難易度が大きく異なるので、事前の情報収集が必要
・メネデール希釈液に浸水すると発芽成功率は良さそう
・殺菌剤はそこまで必要なさそう(ただし、毛の多い品種や殻がしっかりついてる品種は必要かも?)
・発芽管理用土は保水性のある柔らかめの土が良いが、表土が100%バーミキュライトはやめた方が良い(実体験)
今後も継続してオトンナの種まき&実生栽培をすすめていきます。
その中で新たな発見や情報がありましたら、当記事に追加するような形で情報をアップデートしていくつもりですので、SNSなどでフォローいただき追加情報をお待ちください。