コーデックスの実生を行うときに、ほとんどの方が初期の段階ではプレステラなどのいわゆる「プラ鉢」を使う事と思います。
プラ鉢を選ぶ際には「大きさ」「深さ」「形状」「スリットの有無」などの違いを考慮することが多いですが、鉢の「色」が植物の成長に与える影響について考えたことはありますか?
実は鉢の色は見た目以外にも栽培するうえで重要なポイントがあるので、今回はそのことについて実際に検証しつつまとめたいと思います。
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私が好んで使うのは「白い鉢」
私が好んで使っているのはホームセンターでもよく見る「プレステラ」と、白くて丸い形が特徴の「A-25」というタイプのプラ鉢です。
いずれもコーデックスの品種によりますが、実生開始直後~実生2~3年目くらいまで使える鉢なのでとても重宝しています。
私がとりわけ気に入ってるのが「白い鉢」の方。
白い鉢は土の汚れが目立ちやすいですが、ありきたりな黒や茶のプレステラとは違った雰囲気を醸し出してくれます。
そして、見た目以外にも私が白い鉢を好んで使うには理由があります。
プラ鉢の色は太陽光の吸収の違いをつくる
本題に入るのが遅くなりましたが、プラ鉢の色が植物に与える最も大きなポイントは「太陽光の吸収度合い」で、それによる「用土や根を温める効果」に違いをもたらすと言われています。
植物の根が温まると何がいいのか?と言いますと、コーデックスなどで暖かい時期に生長する夏型のタイプだと根が温まることでよりよく成長します。
生育環境がばらけてしまうので成長タイプで鉢の色を変えることはしないですが、実際に屋外に置いている黒いプレステラと白い鉢を触り比べると、確かに黒いプレステラの方がはるかに熱い。
黒い鉢のいい面は「太陽光が少ない時でも鉢が温まりやすい」という点ですが、逆に「真夏のピーカン照りの時は鉢内部が高温になる」というデメリットにもなりえます。
太陽光が直接プラ鉢にあたる環境で育てる場合は、水やりのタイミングを間違えて太陽の出ている真昼間に行うと鉢内部で根が蒸れて植物がダメになる可能性もあるんです。
私が好んで白い鉢を使うのはこれが一番の理由です。
そもそもプラ鉢の特徴として「鉢内の温度が上がりやすい」
鉢の色に関わらず、そもそもプラ鉢は鉢内の温度が上がりやすいという特徴があるのですが、それが黒い色のプラ鉢だと顕著になるという事なんですね。
加えてプラ鉢は通気性もさほど良くないので、先ほど書いた通り水やりのタイミングを間違えると根が蒸しあげられてしまいます。
では、黒いプレステラと白いプラ鉢ではどの程度鉢の内部の温度に違いが出るんでしょう?
気になったので実際に実験してみました。
黒いプレステラと白いプラ鉢で鉢内用土の温度差を観察
気温34℃ | プレステラ(黒) | プラ鉢(白) |
設置直後:8時 | 28.7℃ | 29.8℃ |
1時間後:9時 | 38.8℃ | 37.8℃ |
3時間後:11時 | 44.4℃ | 43.2℃ |
水やり直後:12時 | 34.6℃ | 33.1℃ |
水やり1時間後:13時 | 42.3℃ | 38.3℃ |
温度がどの程度上がるかを実験するために、あえて直射日光が鉢にあたる場所に置き観測しました。その結果が上の表になります。
観測条件
実験を行った環境は8月中旬の晴れの日。日中の最高気温は34℃でした。
プレステラ90(黒)と白鉢(A-25)に、赤玉土とゴールデン粒状培養土をまぜたものを入れて、LCD温度計を差し込んで温度変化を測定しました。
使用したLCD温度計はこれ
午前8時から正午まで数回測定し、水やり後の温度変化も観測しました。
おそらく「直射日光がどれくらい当たるか」「風がどのくらいあるか」なども大きく影響すると思うので、観測したタイミングで曇っていたり、風邪が強かったりすると温度があまり上がっていなかったりすることもあります。
そのため「それぞれの鉢の色の違いでおきる温度の差」に焦点を当てています。
観測過程
観測開始当初
観測開始当初はなぜかプレステラ黒の方が温度が1度ほど低かった。
おそらく、白い鉢よりもやや大きいので鉢の中心部分にまで日光の熱が届いておらず、温度計のプローブを差し込んだ直後はまだひんやりしていたんでしょう。
観測開始1時間後:午前九時
液晶部分が少し見にくいですが、日光に鉢が暖められだしてから1時間ほどで黒いプレステラの方が白い鉢よりも温度が高くなってきました。
観測開始3時間後:午前11時
直射日光が当たりはじめ、日が高くなって3時間が経過した午前11時。
黒いプレステラの温度が44.4℃になり、白い鉢の方も43.2℃とかなりの高温になってきました。温度差は以前1℃くらいですが白い鉢の方が低いです。
水やり直後:正午
完全に熱せられたプラ鉢に水を注いでみると、一時的に温度が下がりましたが依然黒いプレステラの方が1度以上高いですね。
当然かもしれませんがすぐに鉢内の温度が上がって蒸しあげられるわけではなさそう。
水やりから1時間後:13時
液晶部分が見えにくいですが、水やり後に日光に当てられた鉢はまた先ほどと同じくらいまで温度を上げ、特にプレステラの方は42.3℃にまで上がりました。
一方で白い鉢は38.3℃と若干クールダウンした様子。
この辺りで本日一番両方の鉢の間で温度差が大きくなりました。
黒いプレステラと白プラ鉢での温度変化をみた結果
気温34度の条件下で鉢に直射日光が当たる場合、黒いプレステラの方が白いプラ鉢よりも鉢内部の温度が最大で3~4℃高くなり、その差は水やり後数時間で一番大きくなった。
結論としては、黒い鉢と白い鉢では、直射日光下での鉢内部の温度差が最大で4℃になり、結構な温度の違いを生むことが分かりました。
当初は60℃くらいまでなってしまうんではないのかとか思っていましたが、そこまでいかなかったのは少し安心しました。
ただ、この温度の差は、植物を枯らしてしまう程のものになりかねませんよね。特に、発芽して間もなくまだ株が小さい場合や、初めて外気に触れさせるような幼苗の段階の場合は影響が大きいでしょう。
もし、屋外管理を考えている方で鉢に直射日光が当たる環境の場合、プラ鉢の色を黒ではなく白っぽいものに変えるというのは、株を枯れさせないための一つの予防策に成りえるかなと思います。
まとめ
最後に、記事内でご紹介した私の使っている白いプラ鉢をもう一度紹介しておきますね。
プレステラに比べると価格は高めですが、白いプラ鉢はホームセンターでもなかなかないので、見た目をそろえるうえでも私はネットでまとめ買いしています。
プレステラを使うにしてもこれだけ鉢の色で温度が変わるというのは、実生株を野外管理に切り替えるときにより注意深く実行することができると思います。
直射日光、特に強い西日があたる環境でコーデックス栽培をする方は、プラ鉢の色にも気を付けてみてください!