コーデックスなど園芸関連のサイトやSNSを見ていると頻繁に見る「腰水」という言葉。
「鉢ごと水をはった容器に長期間浸して鉢底から吸水する水やりまたは管理の方法」を言うのですが、私が種から育てる実生栽培を始めた時は、その意味や効果がよくわからず普通に鉢に種を植えて水やりをしていました。
「鉢を水の入った容器に浸してべちゃべちゃになりそう」とか「なんかよくわからないけど上から水をあげるのとどう違うの?」とか思っていました。
でも、今はコーデックスを種から育てる場合、発芽開始から本葉が数枚出るくらいまでは必ず腰水で管理をしています。
本記事では、初めてコーデックスの実生栽培を始める方で、腰水の意味やメリットがよくわからない方に向けて、基本的な腰水管理についての解説をしたいと思います。
Contents
腰水とはどういう状態のことを言うのか
繰り返しになりますが、鉢よりも一回り大きなバケツなどの底に穴が空いていない容器に水をはり、そこに鉢を入れて長期間鉢底から底面吸水する管理方法のことを「腰水」と言います。
一時的な鉢底からの底面吸水であれば、微細種子などの上部からの吸水では種子が流れてしまう可能性がある場合や、鉢の上部を植物が覆ってしまっていて上からの水やり自体が難しい場合によくとる方法ではあります。
しかし「腰水”管理”」となると、一定期間鉢を水に浸した状態を指すことが多いです。
※かなり上の方までひたひたに水を入れた腰水管理。アガベは結構ひたひたの方が発芽率が良い気がしています
通常の鉢植えの花の栽培で鉢底皿に水がたっぷりたまった状態のままにすると根腐れを起こしてしまうので、鉢底皿にたまった水はできるだけすぐに捨ててしまいますよね。
腰水管理ははっきりと明確な目的がある時に行う方法で、コーデックス栽培においては特に「種を発芽させる段階」や「発根管理を行う場合」ではこの腰水管理が有効な場合があるんです。
腰水を行うメリットと適したシチュエーション
水切れを起こしたくない「種まき開始~発芽直後」
実生栽培で発芽率を高めるために種子の乾燥を防ぐ必要があり、腰水で管理をしながら蓋やラップをかぶせることで高湿度を保てるというメリットがあります。
※左手前のプラケースの蓋には水滴がびっしり。少し隙間を開けていても高湿度を保つことができる
発芽さえしてしまえば蓋やラップで密封する必要はなくなりますが、発芽直後の株は水切れを起こすとすぐに枯れてしまうために腰水管理をしばらく継続する人が多いのではないでしょうか。
私はパキポディウムなどの実生を行って発芽したら、大体本葉が4枚くらい出るまで腰水管理を継続しています。
※あくまで私なりの目安ですが、このくらいになったら腰水をやめることが多いです
・腰水管理&密封で高湿度を保つことができ発芽を促進できる
・発芽直後に水切れで枯らしてしまう心配がない
・発芽直後の根張りの弱い時期でも、水圧で倒れてしまう心配がない
・微細種子が水流で流れてしまう可能性が少ない
腰水管理は特に種まき直後で有効な場合が多くて、発芽に必要な湿度を保ちつつ、ある程度大きくなるまで枯れさせる心配が少ないというのが一番のメリットだと思います。
そして、発芽直後でまだ根が張っていない幼苗も、水やりの衝撃で倒されてしまうことも無いので、ある程度根が伸びるまでは腰水の方が管理しやすいです。
掻き子や未発根株の「発根を促す時」
これは私の実生栽培の流れからは少しずれますが、アガベやオベサなど掻き子が取れた場合や、根の動きが落ちてきて発根を促したい時などに水耕栽培的に腰水管理をすることがあります。
根が出る株の底の部分に集中的に水が触れることによって発根を促進する効果があるためで、私はしばらく成長が止まっている株に対して行ったりします。
腰水管理を行うときの注意点やデメリットは?
・長期間の腰水管理は徒長の原因になる
・土の中の通気性が悪くなり、根の成長阻害の原因になる
・土や水が腐る・異臭を発する
幼苗時期の腰水管理は水切れの心配がなくなり安定した生育が望めますが、 ある程度成長してしまった後はかえって逆効果になることも少なくありません。
水分過多は「徒長」の原因になりますし、常に水の中に浸かっていることになるので土の内部の空気が枯渇し、土の腐敗や異臭の原因になったりします。
※腰水をしばらくした後の水。こまめに水を変えないと苔が生えたり異臭を発したりしている
私は2~3日に1回はケース内の水を入れ替えますが、一度土の中で雑菌が繁殖してしまうと水を入れ替えた直後でも異臭を発するようになってしまい、室内が腐った水の臭いで充満してしまうことがありました。
こうなると、水よりも鉢の中の土が腐っていることが多いので、水換えでは異臭は排除できず、植え替えるか腰水をやめて一度土をしっかり乾燥させる必要があります。
水分が常に多い環境というのは「雑菌が繁殖しやすい」という事でもあるので、土の臭いや植物の状態を常に注意してみながら管理するようにしましょう。
腰水をする時に鹿沼土を使うと藻が生えやすい
保水性が高い鹿沼土を腰水をする時に表土に使うと、ちょっと見にくいですが上の写真のように「藻」や「アオミドロ」が発生してしまいやすいです。
特に腰水管理の場合は滞留した水が長期にわたって用土に染み込んでいるため、特にLEDライトが当たっている表土に大発生します。
この対策として、腰水をする時に「鹿沼土を(特に表土に)使わない」というのがポイント。
他にも最初は無菌のバーミキュライトなどでも時間がたつにつれてゼニゴケや藻が発生することもあるので、保水性の高すぎる用土を表土に使うのは腰水栽培を長期で行うには「見た目&臭い」的に宜しくない状態になってしまいます。
表土には、小粒の赤玉土などを使うと極端な藻の発生は抑えられるので、状況によって株元に足してあげるなどして光が保水性の高すぎる用土に当たらないようにすると良いでしょう。
また、本来の目的とは少し異なりますが種子の殺菌剤として「オーソサイド」を使うと、同時に藻やアオミドロの発生を抑えてくれるので一石二鳥です。
腰水をやめるタイミングが難しい
腰水をやめるタイミングは人によって様々で、正解は正直わかりません。
私は「本葉が大体4枚出たら」という目安をご紹介しましたが、必ずしもそのタイミングで止めるというわけではなく、その鉢ごとの状態を見て成長が止まってそうだったり、葉が変色するなどの異常が出てきたら早めに腰水をやめますし、逆に葉も青々としてしっかり成長してそうなら継続します。
あと、異臭を発して土が腐ってるな~と感じたら腰水は一旦やめます。
コーデックスの多くは本来乾燥した土地で成長するので、腰水のような状況は想定外のはずですし、ある程度成長したら水はけのよい用土で乾燥気味に育てる方がいいと思っています。
どっちにしろ目的もなく、だらだらと腰水管理をするのは、植物の成長にとってあまり良くないことだとは言えるでしょう。
まとめ
実生を行う上で腰水のメリットやデメリットについてまとめましたが、私は「初心者ほど腰水管理で発芽に挑戦した方がいい」と思っています。
その理由は、私が初めて実生をやった時にプラケースに霧吹きでせっせと水やりをして、結果、土や種子を乾燥させてしまいほとんどの種子を発芽させられないままダメにしてしまった経験があるからです。
慣れると腰水管理はすごく簡単なのでトライしてみてくださいね。