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チランジア/Tillandsia

ハイポネックス培地を用いたチランジアの無菌培養・無菌播種の方法【実生栽培】

チランジア無菌播種

こんにちは、金成コーデックスです。

近年、チランジアの実生栽培をする方が増えているようで、私も実験的に様々な方法で実生栽培を始めております。

そこで本記事では「ハイポネックス培地」をつかった「無菌培養(無菌播種)」でチランジアを種から育てる方法をご紹介します。

無菌培養とか聞くと難しく感じるかもしれませんが、実際にやってみると(やること自体は)そこまで難しくはありません。ただ、コンタミ(コンタミネーション:「混入」の意)が発生すると培地が汚染されて全てダメになってしまうのでその辺が難しい所。

本記事ではハイポネックス培地についての解説&作り方と、私が実際に行ったゼロから培地を作って種をまくまでの工程をご紹介します。

ハイポネックス培地(Hyponex medium)とは

ハイポネックス培地
チランジアの無菌培養を行うときに、ハイポネックス微粉を寒天や砂糖で固めた培地を作るのですが、この培地は「ハイポネックス培地(Hyponex medium)」とか、発表者である狩野邦雄さんの名前から「Kano培地」などと呼ばれています。

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60年近く前に発表された培地で、チランジアにとってこの培地が最適解というわけではないかもしれませんが、趣味家が栽培するうえでは特に問題がないので培地に使う材料の配分やphの値については特に深く掘り下げることはしません。

培地に加えるハイポネックス微粉が無機栄養源として植物に使われるのですが、これが一般的な液肥のハイポネックスではなく、ハイポネックス微粉でなくてはいけないのにはちゃんと理由があります。

多くの液肥は「アンモニア」が窒素肥料分の主材料となっていますが、アンモニアはそもそも土の中で細菌などに無毒化&イオン化されて肥料分としての役割を発揮しますが、アンモニア自体は植物には毒で、無菌培養の培地に使う場合はアンモニアを分解してくれる細菌がいないために土で育てるようには働いてくれません。

しかし、ハイポネックス微粉はアンモニアよりも硝酸性の窒素肥料分が主体なのでその毒性は薄く、培地の無機栄養源として使えるというわけですね。

ハイポネックス微粉
ハイポネックス微粉
ハイポネックス液肥
ハイポネックス液肥

上の画像は微粉と液肥のそれぞれのパッケージに記載された成分量ですが、ハイポネックス微粉は窒素全量6.5のうち、アンモニア性窒素肥料が1.0、硝酸性窒素が5.5となっています。

一方で、ハイポネックス液肥は窒素全量6.00のうち、アンモニア性窒素が2.90、硝酸性窒素が1.05となっています。

上記の通り、無菌培養を行うにはハイポネックス微粉の方が適している(というか液肥ではダメ)なのが分かっていただけたと思います。

ハイポネックス微粉については、別記事で詳しく紹介していますのでそちらも是非参考にしてみてください。

HYPONEX微粉
ハイポネックス微粉の成分と使い方|多肉&コーデックスの冬越し対策におすすめの肥料肥料における三大栄養素のひとつ「カリ(K)」が多く含まれている商品「ハイポネックス微粉」の使用方法や成分についてご紹介します。...

チランジアの無菌培養に必要な材料

材料と購入先

チランジアの無菌培養

・ハイポネックス微粉 1.5g
・砂糖 10g
・粉末寒天
・次亜塩素酸ナトリウムスプレー
・耐熱容器(撹拌用)
・小瓶

本来はショ糖なのですが、普通の白砂糖を使っています。

粉末寒天はDAISOで8gで100円のやつ。少量でちょうどいいです。

次亜塩素酸のスプレーはハイターとか希釈しても良いのですが、これもめんどくさいのでDAISOで100円のものを購入。

撹拌用の耐熱容器は、衛生面の観点から加熱と混ぜるのに鍋で加熱せずに電子レンジを使いたいと思ったので用意しました。肥料を鍋で混ぜても家族に怒られないよ~って方はいらないかも? あとは密封できる小瓶、これもDAISO。

ハイポネックス微粉以外は、DAISOなどの100均で用意できるものばかりです。

ハイポネックス培地を作る分量について補足

1976年に狩野さんが発表されたハイポネックス培地の基本割合は以下の通り。

ハイポネックス微粉3g
ショ糖35g
寒天15g
1000ml
ph5.0前後に調整

今回私はこの数値をもとに500mlを作る(そこまで大量に要らないので)分量にすべく、以下のように変更しています。

ハイポネックス微粉1.5g
ショ糖10g
寒天6g
500ml
ph調整せず

寒天の量を6gと少なめにしたのは8gだとかなりカチカチになってしまいそうなことと、やや柔らかめの培地の方が生育状態も良いという情報があったので少し減らしました。

チランジアの無菌培養のやり方【手順】

1.容器などを消毒する

容器の消毒容器の消毒
無菌培養の敵は「コンタミ」なので、菌が混入する条件をできるだけ減らす必要があります。私の場合は容器を蓋も一緒に熱湯で消毒し、その後次亜塩素酸ナトリウムスプレーを噴霧して容器を清潔な状態にしました。

2.ハイポネックス培地を作る

ハイポネックス培地
撹拌用の耐熱容器(500ml以上入る物)も熱湯で清潔にしておき、そこにハイポネックス微粉1.5g、砂糖10g、粉末寒天6gを入れ、そこに熱湯を500ml注ぎます。


ハイポネックス培地
その後、よく撹拌し、念のため電子レンジで再加熱をしました。

ハイポネックス培地
この工程を鍋で火にかけながら行ってもいいのですが、鍋の滅菌消毒と使用後の処理が大変(それと、普段料理に使う鍋で肥料を煮るのは個人的に嫌)だったので、より簡単なレンジを選びました。

3.瓶にハイポネックス培地の原料を入れて冷ます

ハイポネックス培地
瓶の底から3割程度くらいまで培地の素を注いだら、その上から再度次亜塩素酸ナトリウムをスプレーして蓋を閉めます。寒天を使った場合は常温でも固まるので冷蔵庫などに入れなくても大丈夫です。

ハイポネックス培地
冷え固まれば傾けても動かない寒天で固められた培地の出来上がり。寒天を当初の分量の8g→6gとしましたが全く問題なく固まりました。(※残った培地を指で触ってみましたが、十分すぎるくらいの弾力だったので、もう少し寒天少なくても良いかも?)

4.播種前に種子も次亜塩素酸で殺菌しておく

チランジアの種子の殺菌
今回私が無菌培養で実生をするのが「Tillandsia Tricholepis」と「Tillandsia myosura Large form」の2種類。

チランジアミオスラ
ミオスラの方は種鞘ごといただいたので、そのまま次亜塩素酸に漬け込みました。

チランジアミオスラ
殺菌時間は10分もあれば大丈夫だと思いますが、寒天が固まるまでの間にやったので1,2時間くらいは浸水してたと思います。

5.ピンセットを殺菌して、播種する

無菌播種
培地が固まったら、殺菌していた種子をまきます。

この時につかうピンセットも当然殺菌しておいてくださいね。

種を並べ終わったら、その上からまた次亜塩素酸ナトリウムスプレーを吹きかけて蓋を閉じます。

これで無菌播種が完了!お疲れ様でした!

6.暖かくて光が当たる場所で保管

瓶の保管場所
密封したら明るくて暖かい場所に置いておきましょう。私はLEDライトの斜め下くらいに置いていて、25℃以上は常時あるような場所です。

早ければ1週間程度で発芽がスタートするはずです。

培地による違いの比較実験(キッチンペーパー等)

三角コーナー播種
私は基本的に比較して試すことが好きなのですが、この種子も「ブログでの実験用にお使い下さい」とご提供いただいたものなので、ちゃんと比較実験してみたいと思います。

今回無菌播種につかった2種のチランジアは、同じタイミングで「キッチンペーパー」と「キッチンの三角コーナーカバー」に播種してみました。

容器はDAISOのザル付きのタッパー。同じ種子の成長度合いなどを適宜観察しながら比較していきたいと思います。その観察の内容は別記事にて都度更新していく予定ですので、是非そちらもご覧いただければと思います。

また、この無菌播種より約3週間ほど先立って別種のチランジアを「ヘゴ材」に播種するという方法も試しています。こちらも是非。

チランジア 種
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まとめ

本記事では「ハイポネックス培地って何?」という所と、実際にゼロから培地を作って種をまくまでの工程を解説いたしました。

分量とか書かれて難しい話になると「大変そう~」と思うかもしれませんが、大変なのはコンタミに気を付ける点と、やたらと次亜塩素酸ナトリウムスプレーを使うのでそこらじゅう塩素臭くなってしまう事でしょうか。肌が弱い方は手袋しましょうね。

経過については随時更新いたします。

当ブログでのチランジアの無菌培養の方法は私個人のやり方で、他にも違う方法があると思いますが、あくまでも参考程度にご覧になってください。

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