こんにちは、金成コーデックスです。
私は2020年に入ってから、パキポディウムやアガベなど暖かい季節によく育つ植物から、チレコドン、オトンナ、ペラルゴニウムなどいわゆる「冬型」と呼ばれる涼しい時期によく育つ植物の栽培に力を入れるようになりました。
冬型コーデックスを育て始めて「種子の流通が少ない」「発芽管理が難しい」というのが第一印象。
ペラルゴニウムのように一般的には「難発芽性種子」と呼ばれる発芽させるのが難しい物だったり、チレコドンのように種子が細かくて用土選びや種のまき方からして難しい物、オトンナのように発芽の温度がシビアなものが多い品種など、一癖も二癖もあるような植物が多いんですよね。
私自身が自分で種子を販売してみても感じたことですが、発芽率自体がものすごく低いので種子販売をする上ではかなり慎重にならないといけないとも思いました。
ペラルゴニウムやサルコカウロンは「秕(しいな)」と呼ばれる一見種子ができたようでも、浸水してみて外殻を剥いて見たら実は発芽能力のない種子だったという率が、アガベやパキポなんかに比べてものすごく高いです。
そもそも発芽能力のあるしっかりとした種子かどうかが問題だったりもするのでややこしいんですよね。
本記事では、まずは種子が秕ではなく発芽能力がある種子であるとしたうえで、冬型の実生栽培を始めるときに知っておくと良いかもしれない発芽のコツについてまとめます。
Contents
冬型は休眠打破ができてないと発芽しにくいものが多い
この投稿をInstagramで見る
私はこれまで冬型コーデックスと呼ばれる品種の実生栽培をそこそこやってきました。
その中でも、全敗(発芽ゼロ)に終わってる品種も少なくないんです。実は。
自分の中での整理のためにも下にまとめますと、
- チレコドンペアルソニー
- チレコドンシングラリス
- チレコドンレティキュラーツス
- チレコドンパニクラーツス
- チレコドングランディフローラス
- オトンナクラビフォリア
- サルコカウロンムルチフィダ
- オトンナアルブスクラ
- ペラルゴニウムトリステ
- ペラルゴニウムアッペンディクラツム
- ペラルゴニウムロバツム
- ペラルゴニウムクリツミフォリウム
- サルコカウロンキリアツム
- チレコドンワリチー(全敗)
- チレコドンピグマエウス(全敗)
- チレコドンカカリオイデス(全敗)
- オトンナレピドカウリス(発芽までに超絶時間がかかる)
もちろん、全てにおいて種子の鮮度や環境の違いなどが関係してくるのですが、これまでに私が実際に播種してみて上手くいった品種と上手くいかなかった品種をまとめたらこんな感じになります。
難発芽性種子の発芽管理について以下のようにまとめていますが、これだけでは発芽しないものも多かったです。
こんなにも難しいのはちょっと良くない、、もっと再現性のある明らかに発芽率が上がるような方法を冬型の栽培でも確立しないと実生が楽しめない!!!!!
と悩んでいたところ、Twitterでとても有益な事を教えていただきました。
冬型の種子が発芽しないのは温度が高すぎるのかも?
実生栽培について困っている時にいつも救いの手を差し伸べてくれる”たわし集めさん”がツイートでオトンナカカリオイデスの発芽条件に付いて助言をくださいました。
Othonna cacalioidesは低温湿潤条件 (5~12℃)で2週間ほど置くとよく発芽するはずですが、低温下でもあまり発芽しませんでしたでしょうか?
上記条件だと、我が家では9割ほど発芽しました。
— たわし集め Tawashi-Atsume (@tawashiatsume) August 29, 2021
詳細は上記ツイートのツリーを見ていただければもっと詳しく教えて下さっています。
「オトンナの自生地は冬は雨が降るだけではなく夜は霧でビショビショ。冷たくて湿った気候が種子の発芽や成長に適しているのでは」とのことで、私がオトンナの播種をした時は20℃前後で管理して全然発芽しなかったので、温度が高すぎた可能性があります。
そして丁度発芽にてこずっていた「オトンナロバタ」「ペラルゴニウムロバツム」「ペラルゴニウムアッペンディクラツム」「ぺラルゴニウムクリツミフォリウム」などが腰水で管理され発芽ゼロの状態であったので、無理やり低温環境を作る試みをしてみました。
クーラーボックスに保冷剤を入れて低温環境を作ってみた【クーラーボックス実験】
播種から7日経過しても動きが無かった「オトンナ」と「ぺラルゴニウム」各種を、家にあったクーラーボックスにいれ、保冷材を2つ入れてひんやりとした環境を作って一晩放置してみました。
すると、確実に動きがあったのが「オトンナロバタ」で1週間発芽ゼロだったのが7個発芽!!
その他ぺラルゴニウムに関しても、ぺラルゴニウムロバツムが発芽2,アッペンディクラツムが発芽1、クリツミフォリウムが発芽1と、明らかに変化が見られました。
温度は(温度計を置く場所にもよると思いますが)大体15℃~18℃位でした。
この方法は暖かい時期に播種してしまって急遽寒い環境を作ったものなので正攻法ではありませんが、おそらく冬型の播種をする時期はたわし集めさんがツイッターで教えて下さったように最高気温が15℃を下回るくらい涼しい時期の方が良いかもしれません。
今回に関していえば、急激に寒い環境にさらされて発芽スイッチが入ってくれたんだと思います。
この投稿をInstagramで見る
私が春にまいて発芽率が悪かった時で気温20度前後だったので、もしかしたら10月に入ってから播種した方が良い品種もあるんでしょうね。もちろん自生地の環境などを考慮して適した発芽温度が細かく違うと思いますが、私が想定していたよりもはるかに低い温度の方が発芽率が良いというのは驚きでもあり学びでもありました。
なんか「発芽=暖かい温度」という固定観念があったんですよね。冬型といえど発芽するにはあったかい方が良いだろうという思い込み。
今回のクーラーボックス実験から、特にオトンナは冷えてビショビショの寒い環境を作った方が発芽することが体験できました。
タイトルにもある「冬型播種で芽が出ないときにやってみてほしいこと」というのは、クーラーボックスに入れて氷などで冷やすなり、冷蔵庫に突っ込むなり、想定しているよりも低温の刺激を与えてみては?というものです。
低温湿潤管理を2週間やってみる
クーラーボックス実験は、私がもう播種をしてしまっていたので急遽対策として行ったものですが、播種前であれば種子を湿潤環境において冷蔵庫などに数週間保管する「低温湿潤管理」をすればもっと場所も取らず簡単です。
「低温湿潤管理 種子」などとググればもっと専門的な情報が出てきますが、私がやった方法を簡潔に書くと以下の通りです。(※これがベストの方法かどうかはわからないので参考程度に見て下さい)
- 種子をメネデール&殺菌剤の希釈液に3~4時間浸水
- ぺラルゴニウム・オトンナ共に特に外殻は外さずキッチンペーパーで包む
- 100均のチャック袋に入れて、霧吹きして全体的に湿らせる
- タッパーに入れて冷蔵庫(約5℃)で2週間保管
低温とは言え長期間吸水状態を放置するので種子の殺菌は予め行いました。
低温湿潤管理に関しては、発芽率がどうだったかなども含めて追ってまとめます。
たわし集めさんによればこの方法(具体的なやり方は違うと思いますが)で、オトンナカカリオイデスが9割発芽したとのことなので、少し期待しながら発芽管理をしたいと思います。
【2021/9/7追記】低温湿潤処理の結果をブログにまとめました
【2021/9/4追記】ペラルゴニウムやサルコカウロンは低温湿潤処理よりも燻煙処理が効果的
当記事をツイッターでシェアした後に、たわし集めさんから追加情報をいただきました。
Othonnaは前にお伝えした通り、低温湿潤処理が有効な種類が多いですが、南アフリカのPelargoniumやSarcocaulonなどフウロソウ科 (Geraniaceae)の発芽には燻煙処理が大変有効です。
無処理では、低めの絶妙な温度条件で3週間以上経過するとポツポツと発芽しますが、燻煙処理すると1、2日で発芽します。
— たわし集め Tawashi-Atsume (@tawashiatsume) September 4, 2021
非常に有益なので、上記ツイートのツリーをご覧いただければと思いますが、面白かったのは「低温湿潤処理が効果的な種に関しては、燻煙処理はあまり目に見える効果がない」という所。
このお話をその通り受け取ると、オトンナは低温湿潤処理が効果的なので燻煙処理自体は(低温湿潤処理で得られるほどの)効果は無い、という事だと思います。
ペラルゴニウムやサルコカウロンなどフクロソウ科の種子に関しては、圧倒的に燻煙処理が効果的でスモークペーパーを用いた処理方法を具体的に教えていただきました。
ぺラルゴニウムの燻煙処理は、私は浅いシャーレのようなものにスモークペーパーを載せて、その上に種子を置いてから水を垂らして吸水させていました。
しかし、この方法だと水を多く必要としてしまうので燻煙成分が薄まり過ぎてしまう事と、濃度を高めようと水を少なめにすると気を抜いたら乾燥してカラカラになってしまいやすいというデメリットがありました。
たわし集めさんが教えて下さった方法は、下のマイクロチューブという良く種子を購入した時についてくるような小型のケースに小さく切ったスモークペーパーと種子を入れるという方法。
上の写真のような感じで、水を少なく濃い濃度で乾燥の心配なく燻煙処理を施すことができます。これは便利。貴重なスモークペーパーの節約にもなりますね!
スモークペーパーに関しては「農薬扱い」になるようで、メルカリやヤフオクで取り扱ってる方は販売する資格を持っていない可能性があるので購入しない方が良いです。購入方法としては海外からの輸入が主な方法になるので個人では手に入れにくいかもしれません。
スモークペーパーを輸入できるサイトのリンクを下に貼っておきますが、海外サイトのため自己責任でご購入下さい。ちなみに私が使っているスモークペーパーはこのサイトから購入した方からいただいたものです。追加購入する場合は私はこのサイトから購入するつもりです。
スモークペーパーが購入できるサイト(※海外サイト)
まとめ
冬型の実生栽培は結構難易度が高いと思っていましたが、そもそも私の発芽適温などの認識や自生地の環境に関する調査不足が招いた結果だったようです。もっと勉強しなくてはいけませんね。
でも、こうやって自分が失敗して、色々実験してみて、他の方の助けになることもあると思ってブログを書いているので、私の失敗も無駄じゃない!!はず!!!
という訳で、早まって冬型の種子を播種してしまったけど全然発芽しない!!と焦っている方がおりましたら、一晩冷蔵庫に入れてみるなりクーラーボックスに保冷剤と一緒に入れてみるなどしてみてください。
もしかしたら発芽するかもしれません?(※自己責任でやってね)