こんにちは、金成コーデックスです。
私は主に冬型のコーデックスをメインに栽培していますが、中でも特に好きなのが「オトンナ/Othonna」というキク科の植物です。
およそ120種類が知られていて、そのほとんどが南アフリカのグレーターケープ植物区内(Greater Cape Floristic Region:GCFR)に自生しています。
葉が多肉質だったり、塊根部が丸く肥大したり、灌木のような姿だったり、花がらがトゲのように残ったり、気づいたらオトンナの沼に落ちて様々な品種を集め、栽培し、自家採取した種子で実生を楽しむようになりました。
オトンナにハマるようになったのは、以前はオトンナの種子の流通が少なく難発芽性であったため実生のハードルが高かったんですが、「低温湿潤管理」という冷蔵庫で発芽させる方法である程度発芽させられることが分かってきたことが大きいです。
そこで本記事では、私がこれまでに栽培してきたオトンナの種類についての基本情報や栽培難易度、管理方法など気づいたことをまとめたいと思います。
あくまでも個人の記録という感じなので内容については不正確・未確認(仮説)のものも多分に含みます。あくまで参考程度にご覧いただければと思います。
※基本的に私が栽培したことのある品種がメインとなっておりますが、現在では枯らしてしまって手元にない品種や、流通量が多く情報が多い品種に関しては栽培経験が乏しくても情報を載せている場合があります。
※入手難易度・栽培難易度・発芽難易度などは私の個人的見解によるものです。
※レッドリストの分類は、記事執筆時のものです₍※改変に気づき次第修正しますが、修正漏れがあれば教えてください₎
※それぞれの具体的な実生栽培の経過などについては、個別記事をご覧ください。
【Othonnaに関する関連情報はこちら】
オトンナの発芽に関しては以下の記事を参考にしてください。
Contents
- オトンナの種類と特徴について
- 1.Crassothonna(Othonna) claviforia / クラスオトンナ(オトンナ)・クラビフォリア
- 2.Othonna cacalioides / オトンナ・カカリオイデス
- 3.Othonna herrei / オトンナ・ヘレー
- 4.Othonna euphorbioides / オトンナ・ユーフォルビオイデス
- 5.Othonna wrinkleana / オトンナ・ウリンクリアナ
- 6.Othonna lepidocaulis / オトンナ・レピドカウリス
- 7.Othonna hallii / オトンナ・ハリー
- 8.Othonna armiana / オトンナ・アルミアナ
- 9.Othonna lobata / オトンナ・ロバタ
- 10.Othonna triplinervia / オトンナ・トリプリネルビア
- 11.Othonna arbuscula / オトンナ・アルブスクラ
- 12.Othonna quercifolia / オトンナ・クエルシフォリア
- 13.Othonna pygmaea / オトンナ・ピグマエア
- 14.Othonna pavelkae / オトンナ・パベルカエ
- 15.Othonna cremnophila / オトンナ・クレムノフィラ
- 16.Othonna tuberosa / オトンナ・ツベローサ
- 17.Othonna perfoliata / オトンナ・パーフォリアータ
- 18.Othonna cakilifolia / オトンナ・カキリフォリア
- 19.Othonna retrorsa / オトンナ・レトロルサ
- 20.Othonna sp. Steinkopf / オトンナ・未同定種・ステインコフ
- オトンナの耐寒性・耐暑性について
- まとめ
オトンナの種類と特徴について
1.Crassothonna(Othonna) claviforia / クラスオトンナ(オトンナ)・クラビフォリア
- 分布と生息地 :Northern Cape~Namibia。砂地や岩の間に自生
- レッドリスト分類:低懸念(LC)
- 耐暑性:最高38℃程度のビニールハウス管理でも生存。ただし、梅雨の時期に蒸れなどでカビが発生したり、腐ったりする株があった。実生半年前後の株でも生き残った。
- 耐寒性:0℃までは大丈夫(※ハウス内の1日の最低温度が0度でも1つも被害がなかった)
オトンナの種類と言ってる割にいきなり「Crassothonna」の品種の紹介になっていますが、以前までは「Othonna」だったので現在でもオトンナの一つとして認識されている人気品種です。
入手難易度は低く、種も容易に採れて、発芽させるのも難しくないので流通量は多い品種ですね!
一つ一つの花は大きめで、一つの花から7~8個の種子がとれます。受粉、結実は容易。
あまりにたくさん種をつけるので、我が家のハウス内のあちこちで野良のクラビフォリアが生えていることからも発芽させるのもそんなに難しくないことが分かると思います。
低温湿潤管理で2~3日で発芽します。
我が家の環境では、真夏のビニールハウス内が38℃程度まで上昇することがありますが、水を切れば生存可能でした。ただし多肉質の葉は変色したり、湿度の高い梅雨時にはカビが生えて腐る株もちらほら見かけました。
秋になり葉や花芽を伸ばした成長期であっても、上から散水したときに葉の間などに水が溜まってそこから腐り落ちる株もあったりするので水やりはできるなら株元に与えるのが好ましいかもしれません。
枝葉が徒長すると本来のクラビフォリアらしいフォルムが崩れるので上手に仕立てたいところですが、なかなか難しいです。
また、冬の間管理していて一番枯らしやすかったのがこのクラビフォリアでした。一時的な低気温(-3℃程度)なら水を切るなどすれば耐えられますが、極度の水切れと冷え込み、密閉したビニールハウス内での高湿度環境など、様々な要因が重なり葉の付け根部分から腐ってしまう株が多かったです。
個人的には数あるオトンナの中でも、寒冷地域での屋外のビニールハウスでの冬越しは「限りなく不可」と認識しました。
流通量が多くOthonna初心者向けかと思いきや、実のところ栽培は意外と難しいです。
■自生地マップ – iNaturalist : Crassothonna clavifolia
■Red List of South African Plants – Crassothonna clavifolia (Marloth) B.Nord.
2.Othonna cacalioides / オトンナ・カカリオイデス
- 分布と生息地 :Northern Cape – Bokkeveld Escarpment to Gifberg。砂地や岩の間に自生
- レッドリスト分類:危急(VU)
- 耐暑性:最高35℃程度までは問題ないが、水やり注意
- 耐寒性:0度までは用土が湿っていようが大丈夫(※ハウス内の1日の最低温度が0度でも1つも被害がなかった)
オトンナの最人気種といっても過言ではないであろうOthonna cacalioides。
数年前までは入手もなかなか難しかったけど、近年では流通量も増え比較的安価に手に入れられるようになりました。
室内LED栽培であれば実生1年以内で開花もしますが、花序が小さく受粉のタイミングが取りにくいです。一つの花から多くて3~4粒の種しかとれないことも流通量がそんなに増えない理由かもしれません。
成長期は水を好み、0度近くに気温が下がるときに用土がガッツリ湿っていても全く問題ないどころかどんどん成長します。下記リンクのiNaturalistの自生地画像を見ていただけると分かりますが、小川のような場所にどっぷり浸かっている様子が見て取れるので、寒くても凍らない限りは濡れてて問題ないように思います。
逆に室内管理でも高温時(30度程度)に長期間用土が湿っていると根腐れのような症状で枯らしてしまうことが何度もあったので、夏季の水やりには注意が必要。
種子の発芽は容易で、低温湿潤管理で5日もあれば発芽します。
後述するOthonna pygmaeaとの関連性や違いに関しても、見た目の特徴よりも採取された場所などの情報があると面白いことが分かってきたので、採取エリアの違うカカリオイデスを入手する機会があったら集めて比べてみたいなと思っています。
■自生地マップ – iNaturalist : Othonna cacalioides
■Red List of South African Plants – Othonna cacalioides L.f.
3.Othonna herrei / オトンナ・ヘレー
- 分布と生息地 :Northern Cape – Richtersveld。岩の斜面や岩陰に自生
- レッドリスト分類:危急(VU)
- 耐暑性:最高38℃程度のビニールハウス管理でも生存。
- 耐寒性:0度までは大丈夫(※ハウス内の1日の最低温度が0度でも1つも被害がなかった)
和名は「蛮鬼塔」。ごつごつした見た目で人気のオトンナです。
人気の品種ですが流通量も多くて入手はさほど難しくはありません。種子の採取も容易で、メルカリなどでの販売も良く見かけますが、もし種子の購入を考えている場合は種親をしっかり見た方がいいかもしれません。
人気品種なのに安価に取引されている理由が、他品種との交配などが起きやすいこともあってか本来のOthonna herreiがどれなのかわからなくなってきているのも原因の一つだと聞いたことがあります。雑種が多い、っていう印象も持つようになりました(※個人的見解)。
花は大きく雄蕊・雌蕊も確認しやすいので受粉しやすいですし、種子も5粒ほどとれます。
発芽も低温湿潤で容易なので、親株がしっかり確認出来て好みの形だったら種子から育て始めるのもおすすめです。小さい時からヘレー特有のごつごつした形が出てくるので面白いですよ。
■自生地マップ – iNaturalist : Othonna herrei
■Red List of South African Plants – Othonna herrei Pillans
4.Othonna euphorbioides / オトンナ・ユーフォルビオイデス
- 分布と生息地 :Northern Cape -Steinkopf and Bushmanland to the Kamiesberg。花崗岩円頂や割れ目などに自生
- レッドリスト分類:低懸念(LC)
- 耐暑性:最高38℃程度のビニールハウス管理でも生存。
- 耐寒性:0度までは大丈夫(※ハウス内の1日の最低温度が0度でも1つも被害がなかった)
花序が落ちたところがとげのように残るのが特徴的なOthonna euphorbioides。
和名は「黒鬼城」で、古株になると樹皮が黒っぽく変色し複雑な樹形になる人気種です。
実生をしていても1年目からずんぐりしたフォルムになり、分岐のしかたや太り方などで早くから個体差が見られるので種から育てるのが面白い品種でもあります。
現地球の抜き苗がオークションに出品されることも多いですが、種子や実生株の流通量も多いので安価にスタートできるオトンナ初心者向けのおすすめ品種の一つ。
室内LED栽培であれば実生1年目から花を咲かせますが、花序は小さく種子は1つの花から多くても3粒しかとれません。ただ、雄蕊・雌蕊の判別は容易なので受粉タイミングは分かりやすく、結実させるのもさほど難しくありません。
低温湿潤管理で発芽可能、4~5日もあれば冷蔵庫内で発根します。
■自生地マップ – iNaturalist : Othonna euphotbioides
■Red List of South African Plants – Othonna euphorbioides Hutch.
5.Othonna wrinkleana / オトンナ・ウリンクリアナ
- 分布と生息地 :Western Cape – Knersvlakte。石英区域に自生
- レッドリスト分類:危急(VU)
- 耐暑性:最高35℃程度まで問題なし
- 耐寒性:0度までは大丈夫(※ハウス内の1日の最低温度が0度でも1つも被害がなかった)
小型で希少なオトンナ、wrinkleana。
西ケープ州の約4か所余りと限定的なエリアでしか確認されておらず、そのエリアは採鉱などで消滅の危機に瀕していたり、小型家畜による踏みつけなどによって生育が脅かされる可能性があるようです。
生息地の危機に瀕してるウリンクリアナですが、栽培環境では実はすごく育てやすく、実生から半年以内に花をつけることもありますし、その花数も多いので種もかなりの数がとれます。
私も自家採取で種子をとり販売もしていますが、おそらくそんなに遠くない将来に普及種レベルの価格に落ち着き入手も容易になると思います。(※自生地の株などを購入する必要は全くありませんので、実生株で楽しみましょう)
私は兄弟株同士で受粉していますが安定して種子をつけていますし、1つの花から4粒以上とることもできます。低温湿潤管理で5~7日ほどで発根するので初心者にもおすすめできる品種です。
■自生地マップ – iNaturalist : Othonna wrinkleana
■Red List of South African Plants – Othonna wrinkleana Lavranos
6.Othonna lepidocaulis / オトンナ・レピドカウリス
- 分布と生息地 :Northern Cape, Western Cape – Garies to the Knersvlakte。石英区域の斜面などに自生
- レッドリスト分類:希少(Rare)
- 耐暑性:最高38℃程度のビニールハウス管理でも生存。
- 耐寒性:0度までは大丈夫(※ハウス内の1日の最低温度が0度でも1つも被害がなかった)
落葉した後に基部が残り爬虫類のウロコのようになるOthonna lepidocaulis。
南アフリカ北ケープ~西ケープ州の限られたエリア(出現範囲:EOO<320㎢)にしか自生していないため、レッドリストではRareに分類されています。
個人的にも大好きな品種なのですが、これまで実生した中で「最も発芽させにくい/難しい」オトンナです。
たいていのオトンナでは有効な冷蔵庫を使う低温湿潤管理ではほぼ発芽せず(※100粒以上試しましたが発芽はゼロ)、ある程度温度変化が必要とのことで5-20度の日内変動のある廊下や野外で管理して、5%程度の発芽率でした。おそらくまだ私はレピドカウリスの効果的な発芽管理の方法がつかめていないのだと思いますが、それにしてもシビアな発芽条件があるんだろうなと推測しています。
花つきは良く、種もできやすいのでこれまでにかなりの数を蒔いたり、実生栽培が得意な知人に配ったりもしたのですが、発芽成功に至る方は少数。
iNaturalistの保全状況の欄には南アフリカの植物の中でもセンシティブでインターネット上での取引で需要が高く、違法に採掘された株の中に含まれていることがあったようですし、実生での楽しみが増えればこういったことも幾分か減るのかなと思っています。
現在までの経験では、スモークペーパーを用いた燻煙処理も効果はさほど感じられず、少し違ったアプローチが必要なのかなと思っています。
■自生地マップ – iNaturalist : Othonna Lepidocaulis
■Red List of South African Plants – Othonna lepidocaulis Schltr.
7.Othonna hallii / オトンナ・ハリー
- 分布と生息地 :Western Cape – Vanrhynsdorp district, between Hol River and Koekenaap。石英区域に自生
- レッドリスト分類:危急(VU)
- 耐暑性:最高30℃程度の室内でも問題なかったが、冠水時に室内が高温(35℃)になり根腐れが発生
- 耐寒性:未確認
小型の希少種Othonna hallii。
出現範囲(EOO<100㎢)と生息地のエリアが限られていて、そのエリアも採鉱などによって現在でも脅かされているようです。
まだ種子を入手したことがないので実生栽培の経験はありませんが、海外から輸入した実生株は半年ほど管理したのち夏の暑さで不在時に蒸れて枯らしてしまいました。できることなら再チャレンジしたい、そして自家採取した種子で実生栽培をしたい品種の一つです。
葉のふちが若干ギザギザしたOthonna sp. steinkopf(※後述)をhalliiとして販売しているのをたまに見かけることがあるので、間違えないようにしましょう。
■自生地マップ – iNaturalist : Othonna hallii
■Red List of South African Plants – Othonna hallii B.Nord.
8.Othonna armiana / オトンナ・アルミアナ
- 分布と生息地 :Northern Cape – Richtersveld, north-east of Eksteenfontein。斜面上部の岩の割れ目に自生
- レッドリスト分類:危急(VU)
- 耐暑性:最高35℃程度の室内でも生存。
- 耐寒性:0度までは大丈夫(※ハウス内の1日の最低温度が0度でも1つも被害がなかった)
Othonna armianaは、前述のOthonna herreiに似ているけど、より扁平で葉が枯れ落ちた後に残るコブが小さいのが特徴。
どうしても育てたくて実生株を購入し栽培中ですが、まだ花が合わないので自ら種子の採取、発芽管理を行った経験はありません(※2022年11月現在)。
アルミアナの分布はRichtersveldというたった一か所のみで、その地域の家畜の過剰飼育による脅威(踏みつけなど)にさらされているようですが、生息しているのが斜面の岩の隙間なのである程度放牧の影響からは保護されているとのことです。それ以上に脅威なのが、園芸でも人気がある品種のため違法に採掘する人間が後を絶たないこと。
最近よく見かけるのがヘレーとの交配種で、似た性質のせいか種子がとれやすい?ようで、同時に栽培している場合は交雑にも注意が必要かもしれませんね。ネットで実生株や種子を購入する場合は、交雑の可能性や親株の情報を確認したほうが良いかもしれません。
個人的には今後栽培に力を入れていきたい品種です。
■Red List of South African Plants – Othonna armiana Van Jaarsv.
9.Othonna lobata / オトンナ・ロバタ
- 分布と生息地 :Eastern Cape, Northern Cape, Western Cape。砂地や岩の露頭、石英区域の粘土質土壌などに自生
- レッドリスト分類:低懸念(LC)
- 耐暑性:最高38℃程度のビニールハウス管理でも生存。
- 耐寒性:0度までは大丈夫(※ハウス内の1日の最低温度が0度でも1つも被害がなかった)
灌木系のオトンナの中でも流通量が多く、主幹が太るので人気があるOthonna lobata。
我が家では輸入種子から発芽させましたが、低温湿潤管理で10日以上経過してから動きがありました。クラビフォリアなどの小型塊根品種よりもやや時間がかかりますが、同じような管理で発芽までもっていくことはできそうです。
上の写真はOthonna lobataの花ですが、ご覧の通り雄蕊と雌蕊の状態が良く見えるので受粉のタイミングが凄くわかりやすいです。
花つきも良いので2株もあればどれかは花のタイミングが合うと思いますし、自家採取で種子を増やすことも難しくないでしょう。
■Red List of South African Plants – Othonna lobata Schltr.
10.Othonna triplinervia / オトンナ・トリプリネルビア
- 分布と生息地 :Eastern Cape。岩場の斜面や崖に自生
- レッドリスト分類:低懸念(LC)
- 耐暑性:最高38℃程度のビニールハウス管理でも生存。
- 耐寒性:0度までは大丈夫(※ハウス内の1日の最低温度が0度でも1つも被害がなかった)
Othonna triplinerviaは流通量も多く、比較的簡単に手に入る人気のオトンナです。
基部を丸く太らせてかわいらしいフォルムが人気の理由ですが、自生地の野生株を見るとその株元が太った形状はどこにも見られず、崖や斜面の岩肌に沿って多数の枝を分岐しながら伸ばしている樹木のようです₍※下記リンクiNaturalistを参照₎。
実生でもある程度枝をほったらかしにしておくとどんどんと上に伸びていくので、ある程度剪定しながら形を仕立てていかないと「購入したときは丸くて可愛かったのに、思ってたのとちがう!」となってしまいそう。
逆に言うと実生栽培下でかわいらしい形状に育てるというのも面白味の一つだと思うので、うまく丸いフォルムを保ちながら成長させるというのを楽しむというのもいいかもしれません。
花弁は基本的に5枚で濃い黄色、花序も大きく種子も採取しやすいです。
ヘレーなんかとの交配種をよく見かけるので、他のオトンナとの交配・交雑も多い印象です。
自生地は、ケープタウンからかなり西側に離れたポートエリザベス、ポートアルフレッド近郊まで幅広いエリアで生息しているので差し当たって種の存続の懸念は低いようです。
■自生地マップ – iNaturalist : Othonna triplinervia
■Red List of South African Plants – Othonna triplinervia DC.
11.Othonna arbuscula / オトンナ・アルブスクラ
- 分布と生息地 :Northern Cape – Richtersveld, Namaqualand klipkoppe, Knersvlakte。岩の斜面や粘土質の土壌に自生
- レッドリスト分類:低懸念(LC)
- 耐暑性:最高38℃程度のビニールハウス管理でも生存。
- 耐寒性:0度までは大丈夫(※ハウス内の1日の最低温度が0度でも1つも被害がなかった)
低木状に成長し、太りながら枝をどんどん分岐させる灌木系のオトンナ、Othonna arbuscula。
自生地では乾燥してかなり日差しの強い岩肌の斜面などに自生していることもあってか、直射や吹きさらす風に舞い上げられた砂から身を守るために、白っぽいロウのような樹脂を分泌して樹皮をコーティングいるようです。暑さに耐えるためか葉も灌木系のオトンナのなかでは肉厚の印象。
流通量も比較的多く、手に入りやすいオトンナの一つです。種子の販売も良く見かけます。
灌木系オトンナの中では普及種?の印象ですが、育ててみるとかなり小さな盆栽状になり、枝の分岐も細かいのでかなり育てがいがあります。
正直、最初はそこまで収集欲がわかなかったんですが(ゴメンナサイ💦)、実生して1年過ぎたぐらいから枝の分岐が進んで格好よくなってきました。
自生地のエリアも広範囲にわたり、レッドリストの分類は「低懸念」です。
■自生地マップ – iNaturalist : Othonna arbuscula
■Red List of South African Plants – Othonna arbuscula (Thunb.) Sch.Bip.
12.Othonna quercifolia / オトンナ・クエルシフォリア
- 分布と生息地 :Western Cape – Bloemfontein。岩山の斜面や草原に自生
- レッドリスト分類:低懸念(LC)
- 耐暑性:最高35℃程度の室内で生存。
- 耐寒性:0度までは大丈夫(※ハウス内の1日の最低温度が0度でも1つも被害がなかった)
低木状に育つ灌木系のオトンナ、Othonna quercifolia。
自生地では西ケープ州に広く生息していて、現在のレッドリスト分類では低懸念になっています。
実生した経験としては、発芽は低温湿潤管理で問題なく、真夏は室内LEDで管理しつつ、涼しくなってからビニールハウスに移動して0℃付近の寒さでも元気に葉を伸ばしています。
オトンナ・アルブスクラに似ていますが、葉の形状や枝の伸ばし方が異なっていて、アルブスクラに比べてより低木状に成長しています。
■自生地マップ – iNaturalist : Othonna quercifolia
■Red List of South African Plants – Othonna quercifolia DC.
13.Othonna pygmaea / オトンナ・ピグマエア
- 分布と生息地 :Northern Cape, Western Cape – Clanwilliam ~ Klipfonteinrand。砂岩のくぼみや割れ目に自生
- レッドリスト分類:希少(Rare)
- 耐暑性:最高35度の室内で、腰水管理で枯れた。
- 耐寒性:未確認
Othonna pygmaeaは、Othonna minimaなどと一緒に”Othonna cacalioidesのシノニム“とされていますが、最近よくヤフオクなどで取引されているのを見かけるようになりました。
私は海外実生苗を一度輸入して育てましたが、管理状態が悪く不在中に蒸れによって枯れてしまいました。
Othonna cacalioidesとの違いについては、葉の形状だったり花の咲き方₍花芽の出る部位₎などが違うと言われていますが、同種の範囲内である(ほとんど差がない)と言えなくもないので難しいところです。
ただ、Scientific nameにあるMr. Comptonが採取したOthonna pygmaeaは、O. cacalioidesの自生地から離れた位置で採取されていて、形状も現在流通しているO. cacalioidesとはかなり異なっているようです。
下記リンク(Red List)には
A rare, range-restricted species (EOO 47 km²), known from two subpopulations.
とあり、Othonna pygmaeaは出現範囲(EOO)<47㎢という狭い範囲にしか生息していません。そしてこの生息エリアはO. cacalioidesの生息範囲から離れています。
現在流通しているOthonna pygmaeaに関しても、産地情報が付いていてこのエリアであれば(たとえO. cacalioidesと記載されていても)Othonna pygmaeaである可能性もあり面白いのですが、産地情報がない場合に、見た目だけでOthonna pygmaeaであるかどうかを判別するのは難しいかもしれません。(※雑種だったりする可能性もあり)
希少であり、高値で取引されることもある品種なので、種子も蒔いてみたら普通のカカリオイデスだったなんてこともあるかもしれません。購入する際は十分に注意しましょう。
■Red List of South African Plants – Othonna pygmaea Compton
14.Othonna pavelkae / オトンナ・パベルカエ
- 分布と生息地 :Northern Cape – prope urbem Steinkopf。南に面した岩肌の斜面
- レッドリスト分類:データ不足(DDD:Data Deficient – Insufficient Information)
- 耐暑性:未確認
- 耐寒性:未確認
1993年にSteinkopf近くの非公開区域にて収集されたようですが、具体的な場所もあまりわかっておらずとても希少でほとんどお目にかかれない品種です。
現在は南アフリカから輸入した種子で実生栽培を行っていますが、自家採取で種子をとって増やせるところまで行けばいいなと思っています。
実際に実生をしてわかっている範囲では、低温湿潤管理(スモークペーパー使用)で15日目で発芽を確認し、その後21日目でさらに発芽したのを確認しています。これまで実生をした中では発芽までに要した時間は最も長く、発芽しないのではないかと不安になりました。
種子のサイズや発芽後の動きはO. cacalioidesに似ているように思います。
■Red List of South African Plants – Othonna pavelkae Lavranos
15.Othonna cremnophila / オトンナ・クレムノフィラ
- 分布と生息地 :Northern Cape -Central Richtersveld. 南側に面した石英の崖(700-1000m)に自生
- レッドリスト分類:危急(VU)
- 耐暑性:未確認
- 耐寒性:0度までは大丈夫(※ハウス内の1日の最低温度が0度でも1つも被害がなかった)
樹皮が白くおおわれ縮れた葉が特徴のOthonna cremnophila。
Othonna cyclophyllaという名前でも見かけますが、両者はそれぞれ別の名前で記録(※参考:The Plant List)されておりお互いがシノニムなどではなさそうなので(今のところは)別種であるとするのが正しいようです。
O. cyclophyllaはレッドリストによるとLC(低懸念)ですが、このOthonna cremnophilaはVU(危急)に分類されています。
他のオトンナと同様に生息地であるRichtersveldは家畜の過剰飼育による踏みつけが存続を脅かしていますが、このO. cremnophilaは崖の斜面に生息しているため、家畜よりはコレクターによる野生株の違法な採取の方が現段階での脅威のようです。
自生地情報を見ると出現範囲(EOO<40㎢)と狭い地域にしか生息していないようですね。
我が家では実生株を購入して育てていますが、現段階ではまだ開花していないので花の様子や結実、発芽の難易度などは不明ですが、花が合えばチャレンジしてみたいです。
■自生地マップ – iNaturalist : Othonna cremnophila
■Red List of South African Plants – Othonna cremnophila B.Nord. & Van Jaarsv.
16.Othonna tuberosa / オトンナ・ツベローサ
- 分布と生息地 :記載なし
- レッドリスト分類:記載なし
- 耐暑性:未確認
- 耐寒性:0度までは大丈夫(※ハウス内の1日の最低温度が0度でも1つも被害がなかった)
Othonna tuberosaに関しては、Othonna heterophyllaのシノニムとされているようで、これらに関しての記載はあれどOthonna tuberosaに関するRed listの記載はありませんでした。
Othonna bulbosaグループとして近い品種らしいのですが、葉がロゼット状に展開して塊根を隠すように生えるのがとても面白いと同時に、水やりがしにくくてちょっと面倒くさくもあります。
現在育てている苗は実生株を国内で購入したものですが、海外も含めてもあまり流通してるのは見かけません。
ロゼット展開の葉の中央部分から花芽が伸び、比較的大きめの花を咲かせます。
■自生地マップ – iNaturalist :
■Red List of South African Plants –
17.Othonna perfoliata / オトンナ・パーフォリアータ
- 分布と生息地 :Northern Cape, Western Cape – southern Namaqualand to the Bokkeveld Escarpment and Cape West Coast, and inland to Matjiesfontein。砂岩フィンボスに自生
- レッドリスト分類:低懸念(LC)
- 耐暑性:未確認
- 耐寒性:0度までは大丈夫(※ハウス内の1日の最低温度が0度でも1つも被害がなかった)
大きい塊根から特徴的な葉を萌出させるOthonna perfoliata。
形状が似ているOthonna filicaulisはシノニムだそうで、他にもOthonna undulosaやOthonna gymnodiscusなんかもよく似ていて見分けるのに少し苦労します。
葉の付け根から茎をのばし、最終的にはその先端に花芽を付けます。
我が家の株は国内実生株を購入したものですが、葉にウズラの卵のような紫色の模様がまだらに入っていて、自生地の写真を見ても同じように模様が入っているものとそうでないものなど様々。
自生地画像の中でも葉に模様があるものをピックアップして分布を調べましたがエリアの一貫性はなく、ただの個体差なのか別種なのかよくわかりませんでした。個人的にはこの模様が気に入っています。
■自生地マップ – iNaturalist : Othonna perfoliata
■Red List of South African Plants – Othonna perfoliata (L.f.) Jacq.
18.Othonna cakilifolia / オトンナ・カキリフォリア
- 分布と生息地 :Northern Cape, Western Cape – Vanrhynsdorp and Hondeklipbaai。深さのある赤砂の平地に自生
- レッドリスト分類:危急(VU)
- 耐暑性:未確認
- 耐寒性:未確認
紫₍ピンク₎色の花を咲かせるオトンナ、Othonna cakilifolia。
我が家では現在実生を開始したばかり(2022/10 播種)のため、発芽したばかりなのですが今のところ低温湿潤管理で無事発芽、発芽開始までは2週間と比較的長い時間がかかりました。
自生地では5か所ほどでしか確認されておらず、いずれも農業地帯ということで小麦の収穫などで生息地が潜在的な脅威にさらされているとのことです。
花の様子や耐暑性・耐寒性についてわかり次第、更新します。
■自生地マップ – iNaturalist : Othonna cakilifolia
■Red List of South African Plants – Othonna cakilifolia DC.
19.Othonna retrorsa / オトンナ・レトロルサ
- 分布と生息地 :Northern Cape – Namaqualand, between Springbok, Hondeklipbaai and Kamieskroon。岩の斜面や花崗岩の浅いくぼみに自生
- レッドリスト分類:低懸念(LC)
- 耐暑性:最高38℃程度のビニールハウス管理でも生存。
- 耐寒性:0度までは大丈夫(※ハウス内の1日の最低温度が0度でも1つも被害がなかった)
縁にギザギザのある長い葉を伸ばしながら分頭していき、枯れた葉がそのまま残って大きな塊になっていくothonna retrorsa。
栽培した印象では、成長も早くて丈夫。流通量も多いので、手に入れやすい点でも初心者におすすめの品種です。花つきは良くて兄弟株同士でも種子をしっかりつけるので、自分で種子を採取して実生をしたい方にもおすすめできます。
よく「白毛タイプ」という感じで出品されてるのを見かけますが、葉の付け根の部分に多かれ少なかれ白い毛があるのが特徴のレトロルサなので、枯れ落ちた葉を切り落とすと大体白い毛が見えます。しかし、個体差などで白い毛がもともと多いタイプもあるようで、好みによると思いますが枯れた葉が垂れ下がるとあまり見えなくなってしまうので、葉を切り落としてスッキリさせ、白い毛を見たい人はそちらを選ぶといいかもしれません。
ちなみに我が家のレトロルサは、特別白い毛が多くはない普通のタイプです。(※種子販売もしていますが、白い毛が多いタイプをお求めの場合はお気を付けください)
■自生地マップ – iNaturalist : Othonna retrorsa
■Red List of South African Plants – Othonna retrorsa DC.
20.Othonna sp. Steinkopf / オトンナ・未同定種・ステインコフ
- 分布と生息地 :Northern Cape – Steinkopf。
- レッドリスト分類:記載なし
- 耐暑性:最高38℃程度のビニールハウス管理でも生存。
- 耐寒性:0度までは大丈夫(※ハウス内の1日の最低温度が0度でも1つも被害がなかった)
近年よく売られているのを見かけるようになったオトンナ未同定種ステインコフ。
その名の通り北ケープ州のステインコフ近郊に自生しているようですが、あまり情報がなくわかっていないことが多いです。
以前、オトンナハリーと混同して売られているのを見かけましたが、最近では sp. steinkopfとして出回っていて、2022年秋ごろから交配種(特にeuphorbioides、herrei)なども見かけるようになりました。
葉に切れ込みがあるので、丸葉のオトンナハリーとの鑑別は容易です。
栽培した印象ですが、我が家には国内ナーセリーから購入した株が3株ありますが、兄弟株同士であるためか受粉しても全くと言っていいほど結実せず、別のルートの花を合わせないと種ができないのではないかと思っています。(2021年の受粉は全敗、2022年も兄弟株同士で受粉してますが結果待ち)
花つきは凄く良くて大量に咲かせ、花粉量も多いので受粉作業自体は簡単なのですが結実しないのですよね。
塊根部が太るのと、多肉質の葉がかわいいので初心者向けではありますが、受粉に関しては苦戦しています。
水が切れると分かりやすく葉がしおれるので焦りますが、吸水すると翌日には復活します。
■自生地マップ – iNaturalist :
■Red List of South African Plants –
オトンナの耐寒性・耐暑性について
■耐寒性:
一般的には5度を下まわると室内に取り込んだほうが良いとか、0度以下になると凍結の危険があるとか言われたりすることもありますが、本記事でご紹介した品種に関して言えば今のところ夜間気温が0度になっても枯れた株は一つもありません。
これは直接風が当たっているとか、朝晩の雨や朝露で濡れた、用土が湿っているなど様々な条件が関係してくるので、0度でも絶対に枯れないというわけではありませんが、環境によっては全く問題がないどころか元気なオトンナも多いです。
■耐暑性:
オトンナにとっては休眠期になる夏、いくつかの品種に関しては外に出しっぱなしにするよりも蒸し暑いビニールハウス内での夏越しを試みましたが、蒸れに気を付ければ枯れずに耐えきることができています。
2022年の夏のハウス内の温度は38度を超えることもしばしばありましたが、遮光カーテンで直射の軽減、ハウスサイド開放による通気性の保持などで冷房等使わなくても大丈夫でした(クラビフォリア、レトロルサ、ヘレーなど)。
ただし、水やりのタイミングなどシビアなものもありますので、できることなら涼しい日陰で夏をやり過ごしたいところです。
まとめ
Othonna/オトンナは冬型の塊根植物の中でも親しみやすいグループだと思います。
未だに種子の入手が難しいものや、発芽させるのが難しいものもありますが、自生地の野生株を輸入せずともある程度実生栽培を楽しめるようになってきたように思います。
自身の経験はまだまだ浅く、情報としても不十分なところが沢山ありますが、少しでもオトンナの実生栽培にチャレンジしたいと思っている方の助けになればうれしいです。
最後に、私が採取した種子などはオンラインショップで販売することがありますので、興味がある方は是非ご覧ください。